夜の一族に光は1
サヨは廊下に出た所で栄次とプラズマが話しているのに気づいた。
「栄次、リカが怪我をしていた。凍夜はそこまで大変なのか」
「……凍夜は容赦がない上、術を使い惑わせ、おまけに強い。だが、記憶内の凍夜を見ると、更夜の方が強いと思った。故に、そこまで苦戦するほどではない。ただ、恐怖に縛られた子供を奮い立たせ、凍夜を討たせるという部分が難しい」
栄次の言葉にプラズマは何かを考え始め、やがて口を開いた。
「栄次、千夜はお前だけで行け。リカが怪我をしたなら、時神は更夜を探す。凍夜に関わるのはリスクだとわかった。消えた更夜……時神の安否のが大事だろ」
プラズマの発言で栄次は複雑な表情を浮かべつつも頷く。
「やはりそれが一番か」
「今回の、望月家を救うという部分は俺達には関係ない。時神を危険にさらしてまで行うことではない。栄次はかすり傷だけだった。
つまり、栄次は凍夜より強い。だから、栄次だけでこちらは問題ないだろう。他は更夜捜索と待機にわける。時神の仕事ができなくなると世界が回らない」
プラズマは冷たい雰囲気で淡々と指示をする。
「時神が関わるのは時神の部分だけにする。アヤが厄に入り込まれる可能性があり、アヤを守ることも忘れずにな。栄次は千夜の術を解いたら、手をひいて、更夜捜索に動け。
凍夜と共にいるのは最大級の厄神だ。時神を優先に救い、様子を見た方がいい。高天原はおそらく気がついているが、弐の世界には、なかなか干渉できないため、慎重に動いているはず。
弐の世界と壱(現世)の狭間にいる書庫の神、天記神が情報をワイズに流していると思っていい。あの神はワイズ軍だ。だからな、望月家は早く凍夜を処理したいワイズ軍に邪魔されることになるはずだ」
「……確かにそうなりそうだ。わかった。先を見て俺も動く」
栄次の返答にプラズマは頷いた。その様子を見つつ、サヨは思う。
……そう、プラズマくん。
それが正しいよ。
望月のフォローも抜かりない。
プラズマくんは判断を誤らない。
「ほんと、すごいよ……」
サヨはつぶやいてから歩き出す。
……こういう時、あたしはすぐに決断できるのか?
サヨは不安を心にしまい、栄次とプラズマの元へと進んだ。
「リカの処置、終わったよ。だけど、アヤは力の制御が今は難しいみたいで巻き戻しが使えない。リカとアヤを休ませるなら、千夜サンを救うのはおサムライさんだね。逢夜サンも連れて行ったら?」
サヨはプラズマと栄次に軽く話しかける。栄次は黙ったままサヨを見据え、プラズマは少し驚いていた。
「サヨ、いたのか……。そうだな。逢夜の術は解いたんだ。逢夜が動ける。だが、とりあえず今回は栄次もつける。千夜は幼いはずだし、女の子だ。難しいと思われる。
で、サヨとヒメは記憶の固定だろ? 俺は……待機する。オオマガツヒに入り込まれる危険がある更夜の親族であったアヤを守る、凍夜に一度会っているリカも守る。
それから、ルナも守らないとな。弐の世界の更夜の家で待機する。リカをあまり動かしたくはないが、ひとりでいさせられないから一緒に連れていく」
プラズマの言葉にサヨは頷く。
「それが今は一番かもね? じゃあ、さっそく行く?」
「ああ、そうしよう」
プラズマはサヨの問いに答え、歩きだした。