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選択肢3

 寝ている両親を起こさないように最大限注意を払い、外に出る。玄関のドアを開けたら、雷が鳴っていた。


 ……あ。台風が近づいているんだっけ?


 リカは夕方のニュースで台風が近づいていることを知っていた。もうすでに霧雨が降っており、これから大雨になることは目に見えている。


 「また……タイミング良く雨……」

 花柄の傘を手に取った所で大雨に変わった。滝のような雨だ。風も強く、外に出るのを一瞬ためらった。


 「はあ……」

 ため息をつきつつ、傘を差し、歩きだす。力強い雨と風で服は気がついたらびしょ濡れだった。


 「あー、お気に入りのトマト色のシャツが……」

 再びため息をつき、歩道を歩きつつ公園に向かう。


 気がつくと第二公園についていた。足取りは重い。


 「いらっしゃい」

 公園の中程、滑り台近くまできた時、マナが声をかけてきた。


 「マナさん。私、回りくどいのが嫌だから、単刀直入に聞くね。私をどうしたいの? この世界から私を消したいの? 私、あなたといつ会った?」

 リカも動揺しながら話していたため、話が前後しているが、マナは理解したようだ。


 「……気がついたのね。でも、気がついても意味はないの。これは『運命』だから」


 「え……」

 マナはリカの手を引く。水たまりに映る青空。


 「あなたは(いち)の世界にいける……」

 「ま、待って! わ、私、平行世界なんて行きたくない!」

 「ふーん。そう。ああ、私はアマノミナヌシを宿す現人神(あらひとがみ)。世界のシステムに逆らうとは笑わせる」

 リカの必死な言葉はマナの嘲笑でかき消された。いままでのマナではない。瞳は黄色に輝き、どこか異様な雰囲気である。


 「……なに言っているのかわからない」

 「わからなくていいの。あなたはあちらに行くのよ」

 マナの雰囲気にのまれたが、リカは違う方向から尋ねてみた。


 「あちらに私を連れていって、私に何をさせたいの?」


  「何をさせたいか? あなたがなんなのかまではわかっていないみたいね? このままじゃ、ループのままよ。なるべく向こうの世界からこちらに帰らずに、自分を見つけてみなさい。あなたが向こうへ行くのは世界のシステムの一つ、運命に組み込まれているのだから」

 マナは楽しそうに笑うと、リカを突き飛ばした。


 「しまっ……」

 リカはバランスを崩し、そのまま水たまりへと落ちていった。


 「いってらっしゃい。……こちらで現れた神の一号が向こうでどう影響するのか、見させてもらうわよ……」

 マナは激しく雨が降る中、電子数字に分解され、消えていったリカにそうつぶやいた。


 リカの傘だけが深夜の公園に寂しく落ちていった。

 

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