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「TOKIの世界譚 」宇宙の神秘と日本神話な物語  作者: ごぼうかえる
一話

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157/316

うつつとも夢とも知らず5

 更夜はスズをそのまま寝かせ、ルナの朝ごはんを作り始めた。


 「おじいちゃあん! フレンチフライズ~!」

 ルナはいつもと変わらず、朝から騒がしい。


 「揚げ物はおやつにしなさい! 朝から食ったら気持ち悪くなるぞ!」

 更夜もルナといると騒がしい。


 「じゃがいも!」

 「今、粉ふきいもを作っている! 味噌汁もちゃんと飲め!」

 「はあ~い」

 更夜は机に粉ふきいも、味噌汁、ごはんなどを置き、ルナに朝ごはんを食べさせる。


 「ちゃんといただきますを……ん?」

 更夜は眉を寄せ、玄関先の気配を感じ始めた。


 「サヨだな……なぜこんなに……」

 更夜は朝食を食べているルナを置いて、廊下に出る。


 サヨは休憩室に使っている、一番玄関から近い部屋に入って行った。更夜は追いかける。


 「サヨ、どうした」

 更夜が声をかけたが、サヨは振り向かない。


 サヨは泣いていた。


 「……なにがあった?」

 更夜はなるべく優しく声をかける。


 「……わかんない」

 サヨは動揺しながら下を向いた。


 「まずは深呼吸だ。それから、何があったか、話してくれるか?」

 更夜に言われ、サヨは深呼吸をし、口を開いた。


 「平和を愛する『K』が皆……悲しんでる」


 「……?」

 「おじいちゃん……助けて」

 サヨは激しく泣き出した。


 「どうした? 泣かずにまずは落ち着いて教えなさい」

 更夜に頭を撫でられ、少し落ち着いたサヨは戸惑いながら話し始めた。


 「おにいがね、目覚めなくなって、弐の……世界にさらわれたの……。おにいを探そうと弐に入っておっかけたんだけど……」


 サヨはそこで言葉を切り、再び涙をこぼし始めた。


 更夜は優しくサヨを抱き寄せる。それにより少し安心したサヨは続きを話し始めた。


 「銀髪のすごい怖い男が、お前は女だからいらない。男に指図するな、男を産めないなら死ねって言った。どういうことかわかんなくて何もできなかった。おじいちゃん、ごめんなさい」


 それだけ言ってサヨは黙り込んだ。


 更夜は歯を食い縛った。

 この言い方、身に覚えがありすぎる。


 ……お姉様……。

 泣き叫ぶ姉の姿が浮かぶ。


 「私はいつまで男にならなければならないのですか?」


 苦しみながら

 許しを乞う母の姿が浮かぶ。


「お願いします! 次は男児を産みますから!」


 殺してやりたかった。

 泣き叫ぶ姉や母の前にはいつも、あの男がいた。


 投げ捨てられた赤子。

 踏みつけられた赤子。

 首を落とされた赤子。


 「ではさっさと次だ」

 産まれたばかりの赤子を殺し、泣き叫ぶ母に暴行する銀髪の男。


 いつも笑みを浮かべている人間とは思えない男。


 更夜は怒り、恨みの感情を溢れさせた。


 ……凍夜か……。

 サヨを傷つけ、俊也をさらうとは、まだ望月を苦しめるつもりか。


 次は殺してやる。

 

 憎しみの感情がオオマガツヒを呼ぶことに、更夜は気がついていない。

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] 自身の父へのエディプスコンプレックス。小さい頃に父親に酷い目に遭わされると、本当に性格が歪んだりしますからね…でも年老いた父親を見ると、なんだかどうでも良くなって、最終的には適当にあしらうこ…
2022/07/27 14:20 退会済み
管理
[一言] あああ。更夜の憎しみの気持ちかぁ。 積もったものだからなぁ……波乱の予感だぁ。
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