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最終話3

 「話すと長くなる」

 プラズマがアヤに言い、アヤは目を見開いた。


 「プラズマっ! あなたなんで……」

 アヤは目に涙を浮かべ、プラズマを見上げる。


 「皆が俺を救ってくれたんだ。泣くなよ、アヤ。ありがとう」

 「私は……栄次と更夜を巻き戻すのに必死で……リカを……ひっ! リカ!」

 アヤは隣で寝かされていたリカに目を向け、リカの傷に震えた。


 「栄次も更夜も……サヨも……怪我をっ! 私はあの後、倒れたのね」

 アヤが目を伏せ、栄次は謝罪した。


 「すまない。アヤ。俺はお前に神力を過剰に使わせた……。本当に申し訳ない」

 栄次の謝罪を聞いた更夜もアヤに謝罪する。


 「……悪かった。ルナの事で頭がいっぱいだったんだ。俺がやった事はただの復讐だ。すまない」


 「私もあなた達に同意したのだから、いいのよ。自分の神力以上の力を使ってしまったことは、私の未熟が原因なの。まだ、神力の上限がよくわからないから、仕方ないわ」

 アヤの発言にプラズマが眉を寄せた。


 「仕方ない? そんなわけあるかよ。よくねぇよ。あんた、死にかけてんだぞ。これはな、そんな軽い問題じゃねぇんだよ。あんたな、自分が消滅したらどうなるか考えてるか? 現代の管理者が消えたら、世界が滅ぶかもしれないんだ」


 「……そうよね。ごめんなさい」

 プラズマに睨まれたアヤは怯えながら、うなだれた。


 「……アヤが無事で良かったよ。こっちは世界の仕組みじゃなく、俺個人の気持ちだよ、アヤ」

 プラズマは冷林を抱いたまま、倒れこむように横になった。


 「俺の大事な仲間が……誰も欠けなくて良かった……。俺を……助けてくれて……ありがとう」

 プラズマは切れ切れに言葉を発すると意識を失った。


 「プラズマ!」

 「アヤ、紅雷王は神力を使い過ぎ、気を失った。彼はしばらく目覚めない」

 アヤが悲鳴に近い声をあげたので、栄次が冷静に説明をする。


 「そんな……」

 「冷林も気を失った。リカは怪我をしている故、休養だ。今はゆっくり休むのだ、アヤ」

 「……わかったわ」

 栄次に布団に戻されたアヤは大人しく目を閉じた。


 一方リカは深く眠っていた。


 しばらくして、栄次と更夜が何かを話している声が聞こえた。


 「紅雷王は優しすぎる。お叱りだけですんだとはな。更夜」

 栄次がため息混じりにつぶやく。


 「俺達があそこで剣王を抑えていたから、ルナが紅雷王を助けに行けたことをあの男はわかってるんだ」

 更夜は軽く笑いながらお茶をすする。そのうち、ルナの声が聞こえ、スズの声が聞こえ、更夜の優しい声が聞こえる。


 「ねぇ、リカ、包帯変えるよ?」

 次にサヨの声がする。

 「少しずつ時間を戻しているのだけれど、なかなか傷が塞がらないの」

 アヤの声もする。


 リカはまどろんでおり、たまに光が見えた時に誰かの声が聞こえた。自分がどれだけ眠っているのか、もうわからない。


 「リカ、一体、誰にやられたんだ? ワイズか? それとも……」

 プラズマの声が聞こえた。


 「マナか?」

 プラズマがつぶやいた時、リカは目を覚ました。


 マナの単語に過剰に反応したリカは飛び起き、心配そうに覗きこんでいたプラズマを押さえつけ、背後に光の槍を多数浮遊させる。


 「り、リカ!?」

 プラズマの困惑した顔にリカの涙が落ちた。


 「殺さなきゃ……マナさんを殺さなきゃ……マナさんはデータに逆らってる……だからっ……」


 「どうなってんだ……? しっかりしろよ、リカ」

 プラズマは仕方なく神力を放出し、リカを平伏させた。


 「マナさんは……こうやって私の邪魔をする。私を殺しに来る! ……はっ!」

 リカは唐突に我に返り、なぜプラズマに平伏させられているのかわからなかった。


 「……プラズマさん……やめて……プラズマさんも私を殺そうとするんですか?」

 プラズマは慌てて神力の放出をやめた。


 「ご、ごめんな。違うんだ。リカが混乱してて俺を殺しにきたから落ち着かせようとしただけなんだ」

 「……?」

 リカは頭を整理する。


 しばらく、固まった。


 何をしていたのか思い出せない。そもそも、プラズマは当たり前に横にいたか?


 「……」

 リカは頭を悩ませる。


 気がつくと、服が薄ピンク色の寝巻きに変わっており、寝かされていたのか布団が敷かれていた。腕には包帯が巻かれ、障子扉に畳の部屋で自室ではないことがわかる。


 「……」

 わけがわからなくなり、勝手に涙が溢れた。

 プラズマは動揺しながら背中をさする。そのうち、時神達が集まってきた。


 「リカ!」

 アヤが涙を浮かべながらリカの手を握り、更夜がどこか安堵の表情を浮かべた。


 「目が覚めたか! リカ」

 栄次が駆け寄り、続ける。


 「お前は一ヶ月ほど目を覚まさなかった」

 「え……」

 「そうだよ。私と更夜とサヨさんが毎日お世話したんだよ」

 スズが更夜の後ろから声をかけた。


 「大丈夫? 目を覚まして良かったよ。あたしは心配で夜覗きに行っちゃったし」


 「スズ……?」


 「何か食べられそうかな? ルナがね、更夜からお仕置きされてて今、じゃがいも一ヶ月禁止なんだって。だからじゃがいも料理にすると、ルナがキレるよ」


 「スズ、じゃがいも関係の言葉禁止ー! お尻百叩きのが良かったあー!!」

 スズの横でルナが怒鳴る。


 「ルナ、お前がこの件が終わったらお仕置きしてくれと頼んできたんだぞ。俺は許していたんだが。お尻叩きは効かないだろ。百回ぶったたいてもケロっとしやがって。百叩きは重刑なんだが、お前にはじゃがいも抜きのが効くようだな」


 更夜の言葉にリカは少しだけ緊張を解いた。

 よくわからないが、更夜がいつもの雰囲気だ。ルナとスズの言葉にもリカは落ち着いた。


 「じゃがバター! こふきいも! ポテトチップス! ポテトサラダァ!」

 「ダメだ。後三十分だ。我慢しなさい」

 更夜はルナを抱え、ルナのお尻を一発叩いた。


 「じゃがいもォォ!!」


 「……えーと……何が?」

 「まあ、色々とな。説明するよ」

 プラズマが代わりに言い、アヤが口を開いた。


 「あのね、あなたは一ヶ月眠っていたの。怪我をしててね、覚えているかしら?」

 「……んんー」

 思い出しているとサヨが部屋に入ってきた。


 「ただいまー。学校早帰りー。リカは? って……リカ!」

 サヨはリカが起きていたので駆け寄る。


 「大丈夫? ワイズに襲われて、スサノオと戦ってからおかしくなってない?」

 「スサノオ……」

 リカがつふやくと、更夜の顔色が変わった。


 「なんだと? サヨ! お前、戦闘になったとは言ってなかったよな? ……なんだ? もう一柱戦闘になったのか?」


 ワイズにやられたことはサヨ達が過去戻りをしたため、時渡りのの禁忌がバレるから罪に問えなかった。それは更夜に報告済である。だが、スサノオと戦い危うく殺されかけたことは言っていない。


 「げっ、ヤバイ! 思わず言っちゃったわ……」


 「サヨ! 俺に黙っていたのか? どうなんだ? サヨ!」

 サヨは更夜の鋭い声に萎縮し、うつむいた。

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