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最終話1

 プラズマと栄次は鶴が引く駕籠に乗り込む。剣王は自ら専用駕籠で飛び立って行った。


 「栄次、アヤに神力を渡せ。アヤが死ぬぞ」

 プラズマが栄次の腿に横たわるアヤの様子を見ながら言った。


 「……ああ。俺の神力を半分与える」

 栄次がアヤの腹に手を置き、神力をアヤに送る。


 「彼女に不安を与え、弱らせるとは、かわいそうにな」

 プラズマが言い、栄次が目を伏せた。


 「ああ、最低だ」

 「彼女は争いを好まない。怖がりで優しすぎる」

 「ああ……」

 栄次が落ち込んでいるので、プラズマは栄次の肩を軽く叩いた。


 「次こんなことが起きたら、更夜を殴ってでも止めるんだ。アヤはなぜか産まれてから浅く、空白の年代がかなりある現代神だ。この子は二十七年目。じゃあ残りの千年以上の年代は現代神がいなかったのか? ってことになる。そんなわけないさ。カラクリがある」


 「ああ……歴史神ナオに歴史の確認をさせた方が良さそうだな」


 栄次の言葉を聞きながら、プラズマは埋め込まれている窓から外を覗く。夕日が窓に反射し、夜と昼が共存しているかのような不思議な時間帯が訪れていた。


 北の冷林の城である高層ビルが堂々と建っている。まわりはなにもない。砂地で砂漠のようだ。

 北の面々は皆、現世にいるため、まわりに家はないのである。


 「まあその話は後だ。今回は勝ちか同等に持ち込むぞ」

 「ああ」

 栄次がプラズマにも少し神力をわけ、プラズマが突然倒れないよう、調整を始める。


 「今回は太陽もいる。天津はアマテラスの関係だ。サキに同意する。月はおそらく傍観。冷林は不当な罰を証明し封印世界から俺を救った。だから、冷林はこちら側。それで、東と西は孤立だ。ただ、ワイズは証拠がないため、問い詰められない。と、いうことで剣王を捨てるかな」


 プラズマは先を予想する。


 「剣王に関しては、俺達が喧嘩を売ったようなものだ。故に、痛み分けか」


 「そう。この会議は誰も罪にならない事を確認するだけの会議だ。意味ないんだ」


 鶴は冷林のビルの前で栄次とプラズマをおろした。プラズマは鶴にアヤを任せ、影の薄い冷林はふわりと浮きながらふたりの後ろをついていった。

 

※※


 一方、望月更夜は兄の逢夜に会っていた。


 「お兄様、リカを探しております。見かけたら……」


 「そこまでボロボロになりながらも、剣王に勝つとはな」

 逢夜は更夜の状態に苦笑いを浮かべた。


 「それより、リカです。見ませんでしたか?」


 「リカ……三つ編みの子か。弐の世界に行くとか言って去っていったぜ」


 「……弐? いつの間に弐に……」

 更夜は眉を寄せる。


 「んじゃ、俺は勤務時間終了なんで、妻のとこへ帰るぜ~。今日は久々に興奮したからな、疲れちまった。かわいい嫁を沢山かわいがって、疲れを飛ばすことにしよっと。お前、はるとはどうなんだ? 凍夜に逆らってあの下女と一緒になること、決めたんだろ?」


 逢夜は突然、目を細め、尋ねてきた。更夜は眉をさらに寄せ、目を伏せる。


 「死後、一度も……会っておりません」


 「そうかい。そりゃあ残念だ」

 逢夜はそれだけ言うと、夕日を背に去っていった。


 更夜ははるの優しい顔を思い出してから、死んだ後の彼女の顔を思い出す。激しい憎悪、後悔が更夜を包んだ。


 ……望月……凍夜……。

 ……俺が殺したかった……

 だが……。


 「……リカは弐にいるのか。サヨを呼ばなくては……」

 更夜は気持ちを落ち着かせ、サヨに連絡を入れる。


 スマートフォンは先程の戦闘で原型をとどめていなかったため、テレパシーで通話することにした。


 「サヨ、無事か」

 更夜が声をかけると、サヨが驚いた声で叫んだ。


 「おじいちゃん!?」


 「デカイ声を出すな。耳が痛い。それで、無事なのか?」

 更夜に尋ねられ、サヨはやや言葉に詰まってから答える。


 「ああ~……あたしらは無事なんだけど……リカがね……酷い怪我してて、応急措置はしたんだけど……あ、ワダツミのメグって子が……」


 「とりあえず、家にいるのか?」

 「え、うん」

 「家の門を開いてくれ。今すぐ帰る」

 「わ、わかった」

 動揺しているサヨを落ち着かせ、更夜は弐の世界の門をくぐっていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ワダツミのメグ?! あわわ。何があったのー?!
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