最後まで戦え4
プラズマは目を見開く。
異質な神力がする方へ向かい、開いていた門から中に入った。
直後、血塗れの栄次、気を失っているアヤが見えた。
「おっ、オイ!」
プラズマは慌てて辺りを見回し、異様な雰囲気の更夜と剣王を見つける。
「どうなっている……」
「プラズマ!」
栄次が気がつき、アヤを抱えてプラズマの元へとやってきた。
「解放された……のか?」
栄次はプラズマがここに来るとは思っていなかった。
「ああ、助かった……。アヤは……?」
「気絶している。剣王の神力を削るため、アヤに神力を沢山使わせてしまった。……すまぬ。死ぬ寸前までいった……。申し訳ありません、紅雷王様」
栄次が頭を下げ、プラズマは目を伏せた。
「助けてくれてありがとう。……栄次には感謝をしている。……だが……」
「……申し訳ありません」
「剣王に喧嘩を売るのは不当だと気がつかなかったのか。アヤが死んだらどうなるか、わかるだろう。俺自身の問題ではなく、世界が壊れてしまうんだ。この子はそういう存在だ。八百年生きていて現代神の重要性がわからないのか」
「申し訳ありません。わたくしの責任でございます」
プラズマの注意に栄次は頭を下げ続けた。
「……おそらく、更夜が突っ走ったのだろうが……あんたは止めるべきだった」
「……はい」
栄次の返事を聞いたプラズマは栄次の肩を軽く叩き、息を吐く。
「……なあ、栄次」
「はい」
「ありがとう。アヤと更夜を守り、俺を救ってくれた。俺のメッセージもうまく受け取ったようだな。……栄次……あんたが横にいないと俺は皆を守れない。だから、いつも頼りにしているよ」
プラズマは栄次にそう言うと、更夜と剣王の元へと向かった。
「プラズマ! 高天原会議には俺も出よう。神力がほとんどないではないか……」
「ああ、頼む。すまない」
プラズマは栄次に一言言うと、更夜と剣王を見据え、鋭く言った。
「もう戦うな。今から高天原会議を開く」
プラズマの声に更夜が素直に退いた。更夜は余計なことを何も言わなかった。プラズマが不利になるようなことは頭の回転の早さから言わないのである。
「なんで罪神が外に出ているわけ~?」
剣王はよろけながら起き上がり、プラズマをうんざりした顔で見据えた。
「なにを言っている、剣王。我の封印が不当だと抗議に来た時神を殺そうとしていたではないか。そちを罪に問う。高天原会議に出るのだ」
「ふ~ん、そうくるかぁ。こいつらが喧嘩を売ってきたんだがねぇ」
プラズマの発言に剣王は軽く笑う。
「こちらは冷林が味方だ。ゆるりと話し合おうではないか」
「……ふっ。アマテラスの神力が濃厚に出ているぞ。隠された神力が出るとは、相当体力を消耗しているようだねぇ。平和主義の戦嫌いの神力。懐かしいなあ」
剣王の発言にプラズマは眉を上げた。
「おや、気がついてなかったかぁ~、いやあ、悪かったねぇ。まあ、いいや。高天原会議に出席する。今回はちょっと楽しかったよ~。ああ、望月更夜、それがしの軍に入らない?」
剣王は軽く笑いながら更夜を見る。
「入るには修行が足らないと感じました。また来ますので、その時はお手柔らかに」
更夜は剣王に否定的な言葉を全く使わなかった。
「はははっ。賢い男だなぁ」
更夜はこの一言が罠だとすぐに気がついた。表の目的は剣王軍に入るための試験を受けに来たので、「入らない」と言ってしまうと喧嘩をこちらから吹っ掛けただけになってしまう。
剣王は戦況を急にひっくり返すので、会話は気を付けなければならない。
「……では、こちらへ」
プラズマが丁寧に剣王を連れていく。
「更夜」
プラズマは更夜を呼んだ。
「はい」
更夜はプラズマに頭を下げ近寄る。
「……やりすぎだ。サヨといい無茶をするな……。無事で良かったよ。……リカがな、見つからないんだ。俺と栄次は高天原会議に出るから……リカを探してくれ……」
「……わかりました」
「ああ、それから……サヨとルナはうちに帰らせた。帰り道に何かしてなければ無事だよ」
「……良かった……」
更夜は一瞬目を見開いた後、安堵した顔になった。
「リカを探してくれ。彼女も無理をしているのかもしれない」
「わかった。必ず見つける」
更夜の言葉を聞いたプラズマは朦朧とした意識のまま、栄次を連れ、ツルの待機場所へと歩いて行った。