最後まで戦え3
プラズマと冷林はツルが引く駕籠に乗り、現世に入った。
プラズマは霊的着物からもとに戻り、神力を消耗しないようにする。
現世に入ってから必死にリカを探した。
もう暗くなってきている。
夕日がなくなればリカの捜索は困難だ。
「リカ、いないな……。現世のどこにいるかもわからない……」
プラズマがそう呟いた時、ツルが思い出したように口を開いた。
「ああ、そういえば、そこらの木に引っ掛かっていた彼女を救出し、高天原西に送ったよい?」
ツルの言葉にプラズマは頭を抱える。
「なんだって! 早く言えよ……。じゃあ高天原西に向かえ!」
「そんな必死にくるなよい! 誰にも見つからずに行けだかなんだか言われたんで、守秘かどうか迷っただけだよい」
「あ、ああ、悪かった」
ツルの言葉に素直にあやまったプラズマは、考える。
……リカ、何をしていたんだ?
どういうことかわからないプラズマはとりあえず、西の剣王領に向かう。高天原会議まで時間があまりない。
少し前、冷林から見えた未来見で、剣王に喧嘩を売ったらしい彼らの心配も始める。
「栄次、更夜、アヤ……無事でいてくれ……」
ツルは高速で高天原西にたどり着いた。剣王の城、天守閣付近におろされ、プラズマはツルにその場にとどまるように言ってから、冷林を連れて走り出した。
「ああ、お前が例のアイツか」
行き道で更夜にそっくりな銀髪の男に出会った。
「……?」
プラズマが眉を寄せたので、銀髪の青年は丁寧に自己紹介を始める。
「わたくしは、厄除け神、ルルの夫で、武神の望月 逢夜と申します。更夜は弟です。お初ですね。……では、あなた様のお名前をお聞かせくださいませ」
逢夜が丁寧に名乗ったので、プラズマもとりあえず、丁寧に名乗る。
「……更夜の……。失礼いたしました。わたくしは時神未来神、湯瀬紅雷王でございます。更夜のお兄様でございましたか。失礼をいたしました。それで……申し訳ございませんが……ひとつ、確認をさせていただきたい。……なぜ、西に?」
プラズマの発言に逢夜は軽く笑った。プラズマは逢夜が本来、東にいる神だと気がついている。
「いやあ、鋭いですね。雇われです。剣王と戦う前に、本当に西に入れるかを試験する役目で、こちらにおります」
「なるほど……更夜を巻き込むつもりか」
プラズマが一言発した時、逢夜は一瞬真顔になったが、すぐにもとに戻った。
「さすが未来神。俺達のこれからを占ってくれないか? ……なんてな」
「占いは幕末からやめたのだ。慶喜の逃げる手伝いをしてからな」
「ほー、徳川家か。江戸に入る前に俺は死んでるからな。平和な時代を願う」
逢夜の言葉にプラズマは少しせつなげな顔をした。
「人間だったのだな。戦死か。妻がいるならば……再び戦に入り込む事もないのではあるまいか……。更夜もそうである。あの男も戦国が抜けておらぬ。我はこういう人間を見た時いつも、安徳帝を思い出すのだ。あの子は徳子と……いや、もう終わった話だ。では……失礼する」
プラズマは逢夜に軽く挨拶をすると、歩き出した。
「あんた、ずいぶんと神力を消耗しているようだな。話し方も時代も『戻っている』んじゃないのか?」
「ああ、もう限界だよ……。冷林、行くぞ」
プラズマは息を吐くと、剣王の城に入っていった。冷林は逢夜に頭を下げ、プラズマを追った。
「人間の霊が神になると厄介なんだ……。データ通りに動かないからな。だから、丁寧に言ったわけだが、話し方の時代が戻っちまってた。『前の神力』が……出てしまいそうだ……。まずいな」
プラズマの言葉に冷林は心配そうな雰囲気を出す。
プラズマ自体、前の神力がなんなのかわからないまま発言していた……。