最後まで戦え2
「さてと……こっちは俺の目的もなにもかも知ってるあいつらなわけだ」
スサノオが威圧を込めつつ、サヨ、ルナを見た。サヨは不意打ちの失神を防ぐため、結界を辛うじて張り、神力を回避した。
「せっかく来たんだ。この異界で消滅し、ワールドシステムに取り込まれればいい」
スサノオは口角をあげながら、神力を向ける。
サヨはスサノオの神力を再び、危なげに結界で弾き、どうするか考えていた。
「お、お姉ちゃん……あの神怖い」
後ろでは、ルナが萎縮しながらサヨを見ていた。結界を張りつつ、サヨは様々なことを一気に考え、一つだけ良いやり方を思いつく。
「ここは弐だ。なら、Kの能力を使う! 弐の世界管理者権限システムにアクセス……『排除』!」
サヨはスサノオを弐の世界から外に追い出そうとした。
しかし、そううまくはいかなかった。
「『拒否』」
スサノオはKではないはずなのに、なぜかシステムにアクセスした。
「嘘……。『排除』!」
「『拒否』」
「くっ……『排除』!」
「『拒否』」
「……なんで……」
サヨは動揺しながら、慌てて結界を張る。今回は少し結界が遅れ、サヨの体を鋭い神力がかすっていった。
「おねえ……ちゃん……」
ルナが不安げな声をあげる。
サヨは息を吐くと、もう一度、スサノオを見上げた。
「なんで、『排除』されないの?」
「俺は『K』ではないが、システムの理解はできてんだ。『K』の言葉を弾くくらい簡単よォ」
スサノオは笑いながら、手から剣を出現させた。
「残念だったな。ふたりまとめて『削除』か?」
「くっ……」
「まあ、俺は女や子供を切り刻む趣味はねぇんで、一撃できめるぞ」
「やばい!」
サヨはルナをかばいながら冷や汗をかいた。
刹那、スサノオの後ろからおぼつかない足取りで血にまみれたリカが現れ、半分意識のない状態で手をスサノオに向けた。
「アマノミナカヌシが命じる……『消えろ』」
リカの頭に電子機器のシャットダウンボタンが現れ、アマノミナカヌシの神力がスサノオを貫いた。
「なんだ! ……ちっ!」
スサノオはリカの言葉通りにその場から消えた。
リカはスサノオがいなくなったのを確認すると、そのまま血を吐いて砂浜に倒れ、意識を完全に失った。
「……え……。り、リカ!」
サヨとルナは戸惑いながらリカに近づく。
「リカ!?」
「ひっ……」
サヨがリカを抱き起こし、ルナは怯えた顔でリカを見ていた。
「リカ……」
サヨが息を飲んだ時、目の前に紫の長い髪をした、高貴な雰囲気の水干袴を着た男が表情なく現れた。
「もう、なんなの! あんた誰? 敵?」
サヨが困惑しながら叫んだが、男は首を傾げていた。
「僕はツクヨミ。アマノミナカヌシのリカは死んだの?」
物騒な事を淡々と言う男にサヨもルナも固まる。
「敵じゃないわけ? 襲ってこないの?」
「敵? よくわからないけど、戦いは終わったみたいだね。そのうち海神が来るから、向こうに返してくれるさ。……今回の戦いも見させてもらったよ。じゃあね」
ふたりはワダツミのメグにそっくりな話し方をしているツクヨミを呆然と見つめる。固まっている内にツクヨミは消えており、代わりにメグが現れた。
「ああ、またここにいるの? リカは生きてる?」
淡白なメグにサヨはどう答えるか迷っていた。
「まあ、いい。元の世界に返してあげる。私はここに入った魂を外に出す役目だから」
「え……」
サヨとルナが同時に戸惑っていると、メグはサヨ、ルナ、リカをふわりと浮かせた。
「では、サヨの心の世界まで送る」
「え……? ちょ、ちょっとまっ……」
サヨはメグに声をかけるが、メグは止まらずに進み始めた。