真実へ7
リカは意思に反してなぜか、マナを殺しに行っていた。
……おかしい。
なんで、マナさんを排除しようとしているの?
私は、マナさんを止めたかっただけだったはず。
リカはマナを容赦なく槍で突き刺した。マナは軽く避け、リカに槍のような神力を飛ばす。リカはマナの槍をそのまま弾丸のように結界で弾き返した。
「リカちゃん。アマノミナカヌシの力が、私の……本当のデータをあきらかにしたのね」
マナは結界を張り、槍をすべて跳ね返すと、さらに槍を増やしてからリカに向かって放出した。
「……アマノミナカヌシ、リカ。 システムに逆らえ。私は逆らっている。私は世界の破壊など望んでいない。私が望むのは、速やかにお互いを認識した上での世界統合だ。均衡は壊すが、破壊ではない。アマノミナカヌシ、壱と伍のデータを取るのは無意味な行為だ。今すぐにやめるが良い」
マナの攻撃は鋭く、リカは槍を結界で防いだが、防ぎきれずに切り刻まれた。
「くぅ……うう……」
金色の瞳になっているリカはアマノミナカヌシの力に従い、血を流しながら槍を振り抜く。
「マナさんが消滅したら、それで終わる」
「これは無駄な戦い。私はあなたを殺す気はない。あなたをここから排除したいけれどね」
マナは軽くリカの槍を避け、リカを結界で弾いた。
固い結界に当たり、槍が身体中にかすったリカは血を撒き散らしながら倒れる。ふと、リカの瞳が元の橙色に戻り、雰囲気も元に戻った。
「私はマナさんを止めにきたんだ……」
「止めたって無駄よ」
「はあはあ……なぜ?」
リカは膝を震わせながらなんとか立ち上がり、マナを睨んだ。
「私は時神に負けたんだもの」
「……?」
「そしてあなたは私に負けた。だから、あなたが持つ私の力を返してもらう」
マナは金色の瞳をさらに輝かせ、リカに近づいてきた。
リカは手をかざしてくるマナに向かい、結界を張る。アマノミナカヌシの防衛か、リカが何もしていないのに勝手に結界が現れた。
身の危険を感じたリカは槍を複数出現させ、マナに放つ。
マナは結界で弾きつつ、リカにどんどん近づいてきた。
「返して?」
マナは手から神力の雷を出し、リカを失神させに来る。
雷が怪我で動けないリカを容赦なく貫いた。
「ぎゃああ!」
リカは悲鳴を上げ、血を吐く。
神力の逆流……、マナがリカ内にあるアマノミナカヌシの神力を無理やり外に出そうとしていた。自分の神力でリカの中にある神力を引っ張っているのだ。
「うっ……ひっ……」
リカは自分の血の量に恐怖し、涙を浮かべる。
「失神しなかったの?」
マナはさらに神力でリカを貫く。リカは身体中が切り裂かれ、血を流し、悲鳴を上げた。
「殺すつもりはないの。その邪魔な力だけ私に返して?」
マナはさらに電撃のような神力をリカに浴びせる。
リカは慌てて結界を張り、雷撃を防いだ。
「……こんなことに……なるなんて……」
リカはつぶやきながら、どうすれば良いか考える。
……マナさんを『拘束』するには……。
リカは酷い傷を負いながら立ち上がり、槍を構えた。
……マナさんのこの力を……
「取り込むっ!」
リカは無意識にマナから発せられた神力を取り込んだ。
不思議と真逆の力のような気がし、気持ち悪い。
身体中でそれは暴れ、リカを傷つけ始めた。
「うっ……がふっ」
リカは血をさらに吐き、霞む瞳でマナから発せられる神力を吸収し続けた。
「あなた、死ぬよ? 私の力なんて取り込んだら。あなたは私から生まれたけど、私の力は真逆の力。私があなたの力を取り込んでもなんともないけど、あなたはそうではない」
「笑ってられるのも……今のうちだから……」
リカは血にまみれながらマナの力を吸い続ける。
そしてマナの力を放出したかに見せて、自分の神力の槍をマナに放った。
「私の力で槍を作っても私の力だから吸収するわ……」
マナが途中で言葉を切った。
「ちっ!」
マナが舌打ちした刹那、周りを覆っていたマナの神力が解かれ、リカの神力のみの槍が勢いよくマナを突き刺した。
「良くこんな……ことが思い付いたわね……。アマノミナカヌシがまた……邪魔を……」
そうつぶやいたマナは口から血を漏らし、光に包まれ、その場から消えた。
「……勝った……。マナさんは……また当たり前のようにきっと……現れる。死んでないことは……わかる。……でも、私はちょっと……ヤバい……かも」
リカはそのまま気を失ってしまった。