真実へ3
電子数字が舞う封印世界内。
プラズマを解放したルナは、目に涙をためながら尋ねた。
「どうすれば、いいの?」
プラズマはハンカチでルナの涙を拭いてやりながら言う。
「そんな不安そうな顔をすんな」
「プラズマ……」
ルナの不安そうな声を聞いたプラズマは、霊的着物になると顔を引き締めた。
「あんたは俺達を監視する神だろ? いいか? ルナ、上に立つ神はな、けっこう大変なんだ。だから、俺が教えるよ」
プラズマは神力を放出し、ルナを呼んだ。
「ルナ、俺の前に来るんだ」
プラズマの雰囲気と神力に怯え、近寄らないルナにプラズマはさらに声をかける。
「大丈夫だ。来い」
やや柔らかく言ったプラズマにルナは恐る恐る近寄ってきた。
「ルナ、神力を解放するんだ。剣王の神力を逆流させる。堂々と、力を流せ」
「……わ、わかった」
ルナはプラズマの前で神力を放出した。プラズマはルナの神力と自分の神力を混ぜ、空間に充満させると剣王の陣に流した。
「気を失わない手前でっ……。ルナ、神力の放出を止めろ。後は俺が流す!」
「わ、わかった……はあ……はあ」
ルナは息を上げながら神力放出を止めた。
「くそ……なかなか破れない……。封印時に神力を使いすぎたか……」
もうすぐで破れるという時に、高天原北の主、冷林の神力を感じた。
「冷林……?」
冷林の神力がしてから、封印の扉が砕け散る音が響く。
「冷林が助けに来た? 俺達のボスだ、外から封印を解こうとしてくれているのか? 俺が封印される必要がなかったことをアイツが証明し、解放を世界に求めたんだ!」
「えっと……」
ルナは首を傾げていた。
「外に出られるぞ!」
プラズマの発言で、ルナは顔を輝かせる。
扉である結界が壊れたら、冷林がすぐに現れた。
「冷林、ありがとう」
プラズマの感謝に青い人型のぬいぐるみは軽く頷くと、ふたりの手を引いて外へと向かった。
「待て! 壱に俺達が出現するんじゃないのか?」
冷林はルナが先程歩いた方向へ進んでいた。
「……たぶんね、お姉ちゃんが……」
ルナがつぶやき、プラズマが眉を寄せる。
「サヨになんかあったんだな?」
プラズマに冷林は小さく頷き、さらにふたりを引っ張って電子数字の海を進んだ。
※※
「……くぅ……もう防ぎきれない……」
封印世界の先、宇宙空間である弐の世界でサヨはワイズの鋭い神力に疲弊していた。
「はやく……リカを呼べ。時間稼ぎでもしているのかYO。残念ながら今頃、更夜と栄次とアヤは瀕死かもしれんぜ?
『アイツ』が、剣王にリカ以外を消すように言ったからNA。剣王が持つスサノオの力が反応している。
スサノオは、リカのせいでこの世界に存在を始めた。私は更夜達を守りたいんだYO。リカが死ねばスサノオとアマノミナカヌシの計画はなくなる。三人も死ななくてすむぞ」
「よく言うね、マジで」
サヨは肩を上下させながら、ワイズの神力に抗っていた。
「お前も神なんだろ? 私の神力を感じるなら、お前はKであり、神だということだYO。リカのせいで世界が変わった。アマノミナカヌシめ……アイツをなんとかするべきか」
ワイズはサヨを苦しめながら、口角を上げて笑う。
「さあ、戦争を始めよう」
ワイズが意味深長な言葉を発した刹那、冷林に連れられたプラズマとルナがサヨの方へ来ていた。
来ていたというより、こちらに転がりながら向かってくる感じだ。おそらく、弐の世界に入って制御ができなくなったのだろう。
本来はKと霊しか弐を自由に動けない。ルナは冷林とプラズマを必死で捕まえようとしているようだ。
「プラズマが来た! ルナがやった!」
サヨは安堵の表情を浮かべた後、ワイズに鋭い視線を向ける。
「さあ、プラズマが来たよ、あんた、どうする?」
「さあて。じゃあ、私はおいとまするYO。楽しかったYO。ありがとう」
「……え」
ワイズはあっさりとその場から消えた。プラズマが来たからとあっけなく消える神ではないはずだ。リカを消しに壱に行ったとは考えられず、サヨは呆然としていた。
「だって……壱でリカを殺すとワイズが裁かれるから、弐でリカを殺そうとしたんじゃないの? 意味わからんちんじゃん、これじゃあ」
「サヨー! 止めてくれェ!」
プラズマが叫んでいたため、サヨはとりあえずプラズマと冷林をKの力で止め、制御を始めた。