真実へ2
栄次と更夜は剣王と戦っていた。未来は変わらずに同じことをしている。
剣王の神力は徐々に増し、試験だというのに殺しにきていた。
「ごめんねぇ~、なんか殺したい気分になってきちゃって。消滅させるつもりじゃなかったんだけどなあ……。なんだかスサノオさんの神力が反応しちゃっててね。ああ、昔から持っているんだよ、存在してない神の神力を」
剣王はそんなことを言いながら、更夜に回し蹴りをした。
重くて速い蹴りを避けた更夜だったが、風圧で額を切られた。
更夜を助けるため、栄次が間に入り、刀で剣王を凪払う。
剣王は強い神力を発し、栄次を切り刻みに来るが、更夜が結界を張って防いだ。
「……強すぎる……」
アヤは血にまみれる栄次と更夜を見、震えながら二人の時間を巻き戻す。もう何度も巻き戻し、アヤの神力は尽きる寸前だった。
「はあ……はあ……これ以上は……」
そうつぶやいた時、体に力が入らなくなった。それでもアヤは再び切り刻まれる二人を助けるため、巻き戻しの鎖を巻く。
「……意識が……」
アヤが倒れ、しばらくしてから栄次がアヤの状態に気がついた。
流れる血を拭いながらアヤを抱き起こす。
「アヤ!」
アヤを揺すった刹那、栄次の背中から強い神力が風に乗り飛んできた。栄次はアヤにかぶさり、剣王の神力からアヤを守る。
切り傷が増える栄次を見た更夜が二人の前に入って、結界を張り、致命傷をさけた。
「……もうだめだ……。更夜……」
栄次は降伏する時期を見ていた。
もう少し早く敗けを認めてもよかったと思っていた。
「更夜……」
栄次は更夜に呼びかける。
しかし、更夜はひとりで剣王と戦い始めた。彼は痛覚がないのか、忘れる自己暗示をかけているのかわからないが、手負いでも関係ない動きを見せていた。
つまり、突然に限界が来るわけだ。更夜は試験関係なく、剣王を殺しにいっている。
「もうやめろ! 俺達の敗けだ!」
栄次の呼びかけに更夜は答えず、剣王にかすり傷を負わせ始めた。刀で攻撃し当たらなければ投げ捨て、手裏剣に持ちかえ、手裏剣を投げ、神力を固めた槍を振り回し、クナイを投げ、飛びはね、剣王の背後を狙っている。
恐ろしいほどに様々な武器を使いこなしている。
しかし、剣王に傷は負わせられるものの、かすり傷。
「更夜! もう退け! 剣王に謝罪するのだ! 剣王は俺達を殺しにきている!」
更夜は刀を地に差し、呼吸を整えると再び剣王に斬りかかる。
「更夜! 頼む。アヤが死ぬ!」
血にまみれた更夜は何も答えない。
「降伏しろ! 更夜!」
栄次が叫び、更夜は歯を食い縛った。
「俺は……コイツを許さない。絶対に許さない……」
更夜はまだ余裕顔の剣王を睨み付けた。剣王は軽く笑う。
「殺すつもりはなかったんだけどねぇ。楽しくなってきたなあ」
剣王の一言に更夜の神力がもう一段階上がった。栄次同様、武神の赤い神力が溢れ出す。
栄次は目を細めた。
……あの男は……戦国(時代)からそうだったが恐ろしく強い……。
武神の力を持ち始めたのか?
だが……剣王は真正面からぶつかって勝てる相手ではないのだ。
それは俺が一番わかっている。
「俺は敗けたのだ……一度」
栄次は気を失ったアヤを優しく離し、立ち上がった。
「更夜を止めなくては」