真実へ1
一方、リカは高天原西に落とされた。ツルが言うには、東にいると誰かに絶対に見つかるらしい。
それはそうだろう。
これから時神が東に一度、揃ってしまうのだから。
「でも……」
リカはルナを止めたかった。
しばらく、考えたら答えはすぐに出た。
本当はわかっていたのかもしれない。
リカはループを繰り返した少し前の「あの時」に、マナから「変えられない運命」があることを散々教えられた。
プラズマが封印されてしまうのは、もう大筋になっており、変えられないのかもしれない。
「なんか……小説みたい……」
リカは小説を書く人間の過程に近いと思った。
大筋は決められており、細かい部分は創作者により変えられる。
世界は常に、誰かに操作されているのかもしれない。
「私がここに降ろされた理由はなんだろ……。過去と未来を上手く繋ぐためか?」
ここにいればいずれ、元の自分と重なる。
ひとつに戻るはずだ。
「私のやることは……?」
リカが剣王の城へたどり着いた頃には、栄次と更夜が血まみれで剣王と戦っていた。
「……!」
戦況を恐々見守っていたリカは逢夜と離れ走り出す。
走ってくるリカと城へ向かうリカが重なる。
一瞬記憶が混ざり、何をするべきか混乱した。
「弐の世界にっ……行かなくちゃ?」
当時のリカは弐の世界へ行くつもりだった。
しかし、今は立ち止まる。
再び剣王の城へ向かい、逢夜に会った。
「帰ってきたのか」
逢夜は驚く感じでもなく、そう尋ねてきた。
「あなたが……事情通だった理由がわかった気がする」
「弐の世界にいるお仲間さんを助けられたのか?」
リカの言葉に逢夜は答えずに、質問を重ねてきた。
「あなたが言う、仲間っていうのは、サヨですね? ルナの力を知っていたのはなぜ?」
「……俺が望月家で霊でもあるからだよ。望月家の能力はわかる。監視しているからな。……道は見つけたのか? 助かる道は」
逢夜に言われ、リカは思い出した。
「……いずれ、スサノオが剣王に命じ、時神を殺し始める……。スサノオと共にいるのはマナさん……。マナさんを止めなきゃ……! サヨも心配だし、弐に行こう!」
リカは再び走り出す。
サヨが「許可」しないかぎり、リカは弐の世界に入れないことをリカは知らない。
※※
サヨは宇宙空間を力なく浮遊していた。ワイズはサヨに鋭い神力を向け、結果、サヨは負けた。
ワイズは辻褄を合わせるため、余裕顔で高天原会議に出てから、再びこちらに戻ってきた。
「望月サヨ、どうだ? 少しは休めたかYO? いい加減、リカを呼び戻せ」
「はあ……はあ……やだ! あんたはいずれ負けるよ。ルナが、やってくれるからね」
移動していた封印空間が再び戻ってくる。封印空間の扉を開こうとしていたサヨと今のサヨが重なった。
「エラーが出ずにすんだ! やった!」
サヨは喜んだが同時にリカにエラーが出ることに気がつく。
……やば……リカが弐の世界にいないと、過去戻りしたタイミングと変わる……。
「そうだ、サヨ。リカは弐の世界に『今』いないといけないんだよNA。これからお前らは合流し、ルナの力で過去に戻る。違うか? サヨ」
「……ちっ」
ワイズの言葉にサヨは舌打ちをした。
「戻せ……弐に。今すぐにだ」
ワイズはサヨを嘲笑する。
……プラズマ、まだ出てこないの?
なにやってんの、
あの兄ちゃんはっ!




