巻き戻せ4
三人は現代に戻ろうとしたが、なぜか「過去」に来ていた。
どこの過去かはわからないが、暗闇に星空で夜であることはわかった。
「お姉ちゃん……失敗しちゃったよ。未来に飛んだら、ルナ達は過去になるってこと、忘れてた。だから、現代飛ばして過去に来ちゃったみたい」
「大丈夫、大丈夫。どっちにしろ、過去に来る予定だったし」
ルナが落ち込んでいるので、サヨは軽くなぐさめた。
「どこらへんの過去なんだろ?」
ルナの説明が全く理解できなかったリカはとりあえず、話を先に進める。
「わかんないけど、場所的に……」
ルナは辺りを見回す。
ルナ達が出現した場所は時神達の家の前。
そして、庭の方でプラズマが更夜に電話しているのが聞こえた。
「更夜、俺達がすべて戻した。こちらは問題ない。ただ、一つ警告をしなければならない。こんなことを続けられると、こちらに影響が出る。もう起こらないようにしてほしい」
プラズマはそう言うと、電話を切った。
「まいったな……。なぜか未来がぐちゃぐちゃでルナの行動をうまく予想できない……。なんかあることは目に見えているが……俺が封印されんのは間違いないようだな」
プラズマは頭を抱えると、家へ帰って行った。
「ルナが力を使いまくっていた過去かー。さすが未来神、先を予想してるね」
サヨが呑気につぶやき、ルナが目を伏せる。
「ルナがこんなことを」
「ルナ、大丈夫だよ。ここから、立ち上がった君は偉いんだ」
リカがルナを優しく撫で、どうするか考え始めた。
「どうする?」
「せっかく、過去にきたし、向こうに置いてきちゃった冷林に会いに行く?」
「そ、そういえば……忘れてた」
サヨの言葉にリカは苦笑いを浮かべる。
「あたしらがやることは、この段階で『プラズマが封印されないように動く』か、おじいちゃんとサムライさんとアヤが剣王と死闘する前に『剣王の神力を半分以下にしてプラズマの封印を弱くする』か……しか思い付かないよねぇ~」
サヨが簡単にどうするかを述べた。
「じゃ、じゃあまず、封印されないように動いてみる?」
「リカはわかってると思うんだけどー、あたしらはプラズマが封印された未来から来たわけだから、封印の事実は変わらなくね? やってみてもいいけど」
サヨの発言にリカは眉を寄せた。
「それなら、剣王が神力を全力でプラズマさんに巻いたなら、それも事実なんじゃないの?」
「いいかな? 辻褄が合えばいいのよん。プラズマが封印されない未来はたぶんない。未来にいたあの男が言ってたじゃん。『タケミカヅチは俺の神力に従っている』って。まず、プラズマが封印されないように動くっていうのもまあ、価値はあるかもだけどね」
サヨは肯定も否定もしなかった。
「とりあえず、高天原会議前にプラズマさんを止めるか、封印された後に救出しやすくするか。現代に戻った時、プラズマさんが封印されたのは変わらないから、剣王の神力を減らして救出しやすくする方が現実的ってことだね。サヨは頭良い……」
「剣王に気づかれずに突然、剣王の神力を低下させる何かがあればね……」
サヨは星空を見上げながら考え、やがていたずらっ子のように笑った。
「思い付いた~!」
「サヨ?」
「リカ、ハッキングだよん!」
サヨの言葉にリカは不安げに首を傾げる。
「どういう……」
「封印のシステムを知ってる? あれは、元々害悪データになってしまった神の神力をデータを書き換えて奪い、弱らせ、消滅させるという古代の神々が使っていたシステムを改良したもの。プラズマはそれに縛られ苦しんでる。
封印罰はこのシステムを使い、罰を与える執行神の神力を、犯罪神に入れて中にあるデータを書き換え、神力を逆流させる拷問罰。プラズマが苦しむこのシステムを変えて、剣王の中から時神の神力を逆流させられれば、剣王の神力は低下する」
サヨの言葉にリカは感心した。
「すごい……どうすれば、できるの?」
「それがさ、まだプラズマが封印されてないから、封印される予定の空間に時神の神力を溢れさせておくことができんじゃんって話ー! あたし、天才じゃね?」
「そっか! サヨは封印場所に行ける力があるんだった! サヨは最初に会った時に、プラズマさんが封印されている場所を見つけてた!」
「そゆこと~」
サヨは微笑みながら、弐の世界を出した。
「こっちのが確実じゃん。マジ天才だわ。あたし」
しかし、こんなに簡単に進む話ではなかった……。