会ってはいけない神5
ひとまず、落ち着いた二人は商店街を歩き始めた。
アヤが何か沢山話しているが、リカの耳には入らない。でも、リカは内容は知っているのだ。
知ってるのはなぜなのか。
商店街の本屋さんを通りすぎた辺りだった。赤髪の青年とサムライ姿の青年が戸惑ったように立っていた。
「やっぱりいたわ……。リカ、私はね……」
「あの二人がいるかどうか、確かめたかったんでしょ……。だから走ったんだよね?」
リカの返答にアヤは眉を寄せる。
この世界のシステムは先程話したが、そこまでは話していない。
「アヤ! なんだ、なんだ! 濡れていて服が透けてるじゃないか! いやあ、いいねー……痛ァ!?」
赤髪の青年は会って早々、サムライに刀の柄で脇腹をつつかれていた。
「失礼だ」
「……へいへい……。あんたら、寒くないか? 風邪引くぞ」
サムライに突っ込まれて、赤髪の青年は本来口にするはずだった言葉を言う。
「あ、ありがとう……。プラズマ。ほんと……下着、透けてるわ……。見ないでちょうだい。あなた達もびしょびしょだわね」
アヤはサムライと赤髪の青年を交互に見つめ、二人が傘を持っていないことに気がついた。
「ああ、こちらに飛ばされたと思ったら、えらい(沢山)雨が降っててな」
「そうだ。すごい雨だった」
サムライに相づちを打つ赤髪の青年。
「えーと……」
リカは戸惑いながらアヤを見る。
「ああ、えー、サムライみたいな格好の方が白金栄次、赤い髪の男は湯瀬プラズマよ」
アヤは慌てて二人を紹介した。
「栄次さんとプラズマさん……?」
リカは眉を寄せた。
聞いたことのある名前だ。
だが、知らない。
「……この子は?」
プラズマがアヤにリカの名前を尋ねていた。
「リカって名前の子よ。ちょっと怪しいのよ。時間が狂ったことにだいぶん関わっていそうで」
「ふむ。高天原案件か?」
アヤの返答を聞いた栄次は悩みながら尋ねる。
「そうかもしれないわ。だから、『サキ』に……」
アヤが『サキ』の言葉を出した刹那、リカはなぜか恐怖に襲われた。
不気味なくらい体が震え、足が言うことを聞かない。
「おい、大丈夫か……」
栄次がいち早くリカの状態に気がつき、声をかけた。
「……」
リカは何かを言おうとしたが、何を言おうとしていたのかわからなくなっていた。
「なあ、サキに反応したんじゃないか? 大丈夫だぞ。サキはいい神だ」
プラズマがリカを元気付けようと言葉を発したが、リカは拷問器具かなんかを思い描いていた。
……いや、違う。
「私は『いま』、そんなこと思ってない!!」
リカは突然に叫び、頭を抱え始めた。
アヤは素早くリカの肩を抱いて落ち着かせる。
「どうしたの? 大丈夫よ。サキはあなたを助けてくれるはずだから」
「……」
リカはそこから何も言えなくなった。単純にわからないのだ。
なぜ、自分が恐怖を感じているのか、助けてくれると言っているのに。
「ああ、なんか変なことされると思ってんだろ? 大丈夫さ。相談するだけだ」
プラズマは何かを察したかのようにそう言った。
「……そ、相談だけなら……」
リカはなんとなく頷く。
アヤはリカの様子を見つつ、サキという神に電話をかけ始めた。