責任とは7
プラズマはルナの傷を心配しつつ、高天原面々に平伏し頭を下げた。
「望月ルナの処罰は私が代わる事でお許しくださいませ。禁忌を犯したこと、謝罪いたします。申し訳ありませんでした」
ルナはプラズマが頭を下げていることに先程同様に驚く。
「それで……何か言うことはあるか?」
剣王が顔を上げるように言い、罪神プラズマに尋ねる。
「はい、では。……ルナ、こちらに更夜が帰ってくる。更夜が帰ったら傷つけられた事を話し、それから『栄次になぐさめてもらうんだ』。栄次は優しいからな。わかったか?」
「……う、うん。で、でも……プラズマは……」
ルナが頷いた時、剣王がプラズマの前に出て、神力を巻く。
「さて、気を失うほどの苦痛を味わい続けろ。気絶したら数百年は眠っちゃいそうだねぇ~」
プラズマの足元に五芒星が現れ、更夜同様鎖が巻き付き、陣に引きずりこまれる。
プラズマは苦しそうに血を吐いた。
「お前ら……覚えてろよ……」
プラズマが最後に剣王とワイズを睨み付け、鋭く言うと消えていった。
封印世界は弐の世界のどこかに共通してあるようだ。
封印罰は電子数字が永遠に流れているだけの何もない世界で、自他どちらかの神力を逆流させ、苦しませ、神を弱らせる罰である。
この世界は元々古代の神々が使っていた世界のシステムで、エラーが出てしまい暴走を始めた強力な神を弱らせ、消滅させるための場所だった。
プラズマは苦しそうに呻きながら、自分の神力に縛り付けられている更夜の前に立った。
更夜は肩を上下させながら、苦しそうに血を吐いている。
「がふっ……ごほっ……」
「望月更夜、封印罰は辛いだろう。神力がずっと逆流するんだ。封印罰はしばらく動けなくなる」
プラズマの表情は暗い。
更夜は苦しそうにしつつ、眉を寄せた。
「そんなことはいい……。な、何をしに来た……」
「俺が罰を受ける。だから、あんたは抜けろ。ルナがオモイカネから重敲きの刑にされた」
プラズマの発言に更夜はプラズマを睨み付け、怒鳴った。
「なんだと! お前、ルナが殴られるのを黙ってみていたのか!」
更夜はプラズマの胸ぐらを掴むと引き寄せてさらに、声を荒げた。
「お前が守ると言ったから、俺はお前の罰を受けたんだ!」
更夜の目から涙がこぼれた。
「ルナは小さな女の子なんだぞ! 残酷すぎる! お前は時神の頭じゃないのか!」
プラズマは余計な事は言わず、目を伏せ、更夜の好きにさせる。
「すまない……だから俺が代わるんだ」
プラズマは更夜に殴られるのを覚悟したが、更夜はプラズマを殴らなかった。
更夜を縛り付けていた神力はプラズマが許したことにより解かれ、自由になる。
「なんだ、殴らないのか」
「お前のようなできた男を殴るわけないだろう。なんか余計な事が起こったんだろ?」
更夜は息を吐くと真っ直ぐプラズマを見据える。
「結果的にはルナに怪我を負わせた。最悪だ。とりあえず、早くここから出ろ」
プラズマは何も言わず、苦しそうに呻いた。血がプラズマの口から漏れ、顎をつたう。
「……ありがとう。俺はお前に助けられた。お前を尊敬している。俺に対し、神力をかなり弱く巻いたな?」
「そりゃあな。封印から解かれた時、ルナを抱きしめられなきゃいけないかと思ってよ……。わざと……弱く巻いた。瀕死で何日も寝込むなんて、ルナがかわいそうじゃないか。追加で……今回はかなり罰にカラクリがある。剣王とワイズは俺を消してから、なんかしてくるはずだ。できたら、俺をすぐに救いだしてくれ」
プラズマは血を吐きながら剣王が出した陣に縛られた。
「……必ず、なんとかして助けに来る。気絶はするな」
更夜は時計の陣に乗ると光りに包まれ消えた。
「ああ……頼んだぜ」
プラズマは苦しそうに呻いてから、口角を上げて無理に笑った。