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責任とは6

 プラズマが鶴に連れられている最中、未来見をした通り、高天原東の頭オモイカネ、東のワイズから高天原会議に出るよう連絡が来た。


 ただ、時神の上にいる高天原北の主、冷林からの連絡ではなかったのがプラズマの顔を曇らせる。


 プラズマが連絡を受けた時にはもうすでに高天原東にたどり着いていた。


 高天原東は最新技術を沢山使っているかなり高度な技術の国。


 辺りは高いビルばかりだが、高天原なので神同様、幻想である。


 神がデータであるというのを逆手にとり、神を数字に分解し、ワープ装置を作るなど頭の良い神が多い。


 鶴は動く歩道の脇に着陸し、プラズマは鶴にお礼を言ってから駕籠から降りた。


 目の前に金閣寺を悪い意味で進化させたような金色の天守閣が見えてくる。ワイズの城である。


  そのまま、動く歩道に乗り、城を目指した。

 プラズマは天守閣に行く途中、未来見をし、会議の進みを確認する。


 ……ルナ?

 なぜ、ルナが……。


 プラズマの未来にルナが出てきた。ルナは置いてきたはずだ。

 プラズマは辺りを見回す。


 ルナの姿はない。


 沢山ある未来の内の一つにルナが来る未来があるということか。


 プラズマはなんとなく上空を仰ぐ。鶴がひく駕籠が三つ、通りすぎていった。


 「今回は高天原東西南北か。霊的月、霊的太陽の姫は呼ばれてない」

 プラズマは動く歩道から降りて、ワイズの金色の天守閣の前に立つと、自動ドアから中に入った。


 一方ルナは鶴に「高天原の会議まで連れていってくれ」と言ったため、ワイズの城前でおろされず、高天原会議の会場となるワイズの城、三階の会議室まで鶴がだっこして運んでいた。


 鶴は命令通りに動くのである。


 城内部は金色ではなく、無機質な雰囲気だった。

 鶴は廊下を歩き、装飾された扉の前でルナを下ろす。


 「では、やつがれはいくよ~い! よよい」

 鶴はルナに軽く手を振ると、笑顔で去っていった。


 「あ、ありがとう……」

 ルナはとりあえずお礼を言う。

 鶴は丁寧にお辞儀をすると、エレベーターのドアを閉めた。


 「よし!」

 ルナはよくわかっていないまま、会議室の扉を開ける。


 「くくく……お前が望月ルナかYO」

 会議室に入った瞬間にルナと同じくらいの身長の少女に話しかけられた。


 「う、うん……」

 ルナは頷きながら異様な空気の会議室を眺める。


 全体的に落ち着いた紅色の部屋で、お高そうな木の机に椅子が並べられていた。


 そこに座っていたのは日本古代の髪型である角髪(みずら)の男性。

 緑色の美しい長髪をしている、竜のツノの生えた男性、それから……青い人型のぬいぐるみ。


 「望月ルナ。もう少しで紅雷王が来るから、そこに正座しといたら~?」

 角髪の男性、高天原西の剣王、タケミカヅチ神が笑いながら床に正座するように言った。


 「こうらい……おう?」


 「お前らがプラズマと呼んでいる男だYO。さっさと平伏しろ、悪ガキ。私は東のワイズこと、オモイカネ。お前、何しにきたんだ?」


 ワイズと名乗るサングラスをかけた謎の少女は、ルナに神力を向け、無理やり平伏の体勢をとらせる。


 「ひっ……うう……」


 失神しそうな神力を浴びせられ、ルナは冷や汗を大量に流しながら、神々に頭を下げさせられた。重たいものが背中に乗っているかのように、床から額を離せない。


 「あやまりに来たのかYO? まさか、責任を取りに来たとか?」

 「……っ!」

 ワイズに言われ、ルナは目を見開いた。ワイズは神力を解き、ルナを解放する。


 「さあ、何をしにきた?」

 「ルナはせきにんを取りに来ました」

 ルナの言葉を聞いたワイズは楽しそうに笑うと頷いた。


 「そうかYO。なるほど。じゃあ、あいつが来るまでお前は床に正座していろ。元々『罪人』の座り方なんだからYO」


 ワイズがそう言った刹那、扉がゆっくりと開き、プラズマが入ってきた。プラズマはルナを確認すると、眉を寄せる。


 「呼び出しに応じました。私は時神未来神、湯瀬紅雷王でございます」

 プラズマは丁寧に頭を下げた。


 「さて、回りくどい話はめんどくさいんで、手っ取り早く聞く。なぜ、望月更夜を封印にした?」

 ワイズに問われ、プラズマは鋭い眼差しを向けつつ、口を開く。


 「その報告だ。望月ルナの代わりに指導者の望月更夜に罪を償わせた。だから、この話は解決している。望月ルナも反省し、世界は俺達時神が寝ずに元に戻した。俺は責任の有無ではなく、結果の報告に来ただけだ」


 プラズマは神々にそう伝えた。


 「その話じゃないんだよねぇ~」

 剣王は不気味に笑いながら話の続きを聞いている。


 「そう、その話じゃあない。なぜ、望月更夜を封印した? 罰を受けるのはクソガキの方だろうがYO」

 ワイズは手に持った杖でルナを指す。


 「違う! 責任の話をしにきたんじゃない! 冷林! なんとか言ってくれ!」


 プラズマは自分よりも神力が下の上司、人型クッキーのような形をした高天原北の(えにしの)神、冷林に意見を求めた。


 しかし、冷林は何も言わなかった。


 「ぬるいんじゃねーのかYO。なめられてんだYO。このガキ、ケツ叩きで躾られてんだろ? 百回ぶっ叩いて封印しときゃあいいんだYO」


 ワイズは前触れもなく、ムチを振り上げ、ルナの頭に足を乗せると、平伏しているルナのお尻にムチを入れ始めた。


 「ひっ……いっ、痛い!」

 破裂音が響き、あまりの痛みにルナが泣き始める。


 「オラオラ! ケツ上げろYO。最初からにすっぞ!」

 「いたいっ! いたいっ!」

 ルナが苦しそうにもがき、プラズマは慌てた。


 「や、やめてくれ!」

 「いたいっ! プラズマ! 助けてっ! いだい! ……あぐっ」

 更夜がした子供のお仕置きとはケタ違いの痛み。これは罪人に行う鞭打ちだ。日本では江戸時代で行われていた重敲きの刑である。


 「やめろ! 俺は責任の有無の話をしにきたんじゃねぇと言ったはずだが? 冷林! 何をしている! お前動かないつもりか?」


 プラズマが怒りをあらわにし、神力を放出する。髪が伸び、ワイズの暴力を止めようと動いた。

挿絵(By みてみん)

 「いたいっ! いたいよぅ! おじいちゃん、おじぃちゃぁん!」

 ルナは泣き叫び、震えていた。


 「やめろよ」

 プラズマの制止はワイズには届かない。


 「痛いだろ? 血まみれにしてやるYO。重敲きの刑ってのは死ぬやつもいるんだ」

 ワイズは冷酷に笑いながらルナを鞭で打つ。


 「やめろと言っている」

 プラズマは乱暴にワイズの手を取った。


 「お前がルナに罰を与えていいわけじゃねぇ。冷林が俺達の上司だ。お前は結果を聞く立場じゃねぇのか」

 プラズマは激しく怒っていた。


 「冷林には判断ができないんだYO。あの神は『子供』だからNE。だから判断は……お前よな。だが、望月ルナは我々にも迷惑をかけている。時神個神の問題じゃあないだろうYO」

 ワイズは剣王を横目で見る。


 「そうだねぇ……望月ルナが色々やったせいで、それがしの軍の、人間の歴史管理をしている神、流史記姫神(りゅうしきひめのかみ)と、神の歴史管理をしている、霊史直神(れいしなおのかみ)、ナオにシステムエラーが出て混乱したんだよ~」


 剣王の言葉にプラズマは目を細めた。


 「嘘をつくな。世界の修復は俺らがやった」


 「違うさ、うちの神に影響が出たのはな、君ら時神の歴史部分だ。まわりが知らない記憶を持っているよね~? 


『元に戻したという行動の歴史』を君達だけが持っている。


それの処理に歴史神達が動いたのさ。君らは人間の皮をかぶって人間から産まれてくる神。歴史の矛盾がないか、人間の歴史管理をしている関係ない神まで時神の調べものに加わる形になったんだ」


 剣王の言葉にプラズマは頭を抱えた。これはいちゃもんだ。


 歴史神は一瞬で歴史の検索ができる。動くほど動いていないはずだ。


 剣王も立ち上がり、ワイズから鞭を受け取る。

 会話に参加しない高天原南のレジャー施設、竜宮オーナー天津彦根(あまつひこね)神はお茶を飲むと、瞑想を始めた。


 「何をする気だ……」

 プラズマがさらに神力を高め、剣王を睨み付ける。


 「このお嬢ちゃん、百敲きの刑なんだろ? ワイズだと君に止められちゃうから、それがしがやろうと思ってねぇ」

 剣王は震えながら泣いているルナに鞭を振り上げた。


 「待てっ……!」

 プラズマより遥かに神力が高い剣王は、プラズマをさっさと動けなくし、ルナに冷淡な笑顔を浮かべる。


 「大丈夫さ、手加減するから~」

 剣王は容赦なく鞭を振り下ろした。ワイズよりも力が強い剣王からの鞭打ちは痛みの度合いが始めから違った。


 「ぎゃアア!」

 ルナが叫び、服の上から血が滲む。


 「ありゃ、やりすぎたか。手加減は難しいなあ~。とりあえず、残りは九十九回?」

 「ひっ……ひぃっ」

 拷問のような状況にプラズマは拳を握りしめ、ついに叫んだ。


 「やめろっ! もうやめてくれ! どうすりゃあ、ルナが許される! 彼女をもう傷つけないでくれ……。更夜に傷つけられ、俺に傷つけられ、お前らにも傷つけられ……彼女はもうじゅうぶん……罪を償ったじゃないか……それなのに!」


 プラズマは動けない中、必死に剣王を睨み付けるが、剣王は関係なく鞭を振り上げる。


 プラズマは彼らがルナを交渉の道具として使っている事に気がついた。


 ……そういう事かよ……。


 ルナの悲鳴が響き、今度は別の所から血が滲む。


 ……許せねぇ。


 「責任を取るなら、どうすればいいかわかるかなあ~?」

 剣王が再び鞭を振り上げる。


 ……こいつらは『俺の封印』を望んでいる。ルナに罰を与えるのなんてどうだっていいんだ。

 罠にハマる形になるが……ルナを守るためには決めるしかない。


 プラズマは息を吐き、目を閉じると、静かに口を開いた。


 「ああ、わかった。……わかりました。私が代わりに……封印罰を受けます」

 プラズマの発言に剣王とワイズは同時に含み笑いをし、ルナを鞭打つ手を止めた。


 「なるほど、それは相応の罰だYO。時神の親玉が封印罰になるのが正しいな、確かに。望月ルナ、特別に許してやるYO。次は覚悟しておけ」


 プラズマが封印される事を望んだ刹那、ワイズと剣王の態度が変わった。


 ワイズはサングラスの奥にある金色の瞳を光らせ、口角を上げる。


 ……そうだ。こいつが消えれば、厄介な事を持ち込むリカを


 消滅させられる……。

 挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 狙いはプラズマかぁ!! これはかなりマズイ感じが……ハラハラ……
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