責任とは4
リカは朝日が差し込むベッドの上で目覚めた。服は昨日のままで、パジャマも着ていない。
「……あれ? このまま朝まで寝るわけないし……。どういう……」
リカは丁寧にかけられた布団を眺め、さらに首を傾げる。
「服が昨日のまま、きれいに布団に入って寝てるのは変だ……」
唸りながら昨日の事を思い出すと、ルナが昨夜来たことを思い出した。
ルナと会話してから先の記憶がない。
「とりあえず、下の階に行こう」
ちなみにリカの部屋は二階の一室だ。アヤの部屋はリカの隣にある。
ドアを開け、階段を降り、台所で水を一杯飲んでいると、ルナの泣き声が聞こえた。
鋭いプラズマの声も聞こえてくる。何事かと声が聞こえた部屋の障子を覗くと、時神達がそろって正座しており、真ん中にプラズマとルナがいた。
「ルナちゃん……泣き叫んでる……。プラズマさんが怖い……。何してるの……?」
そんなことをつぶやいていると、栄次と更夜が同時にこちらを向いた。リカは息を飲んだが、二人は何も言わずにルナとプラズマの会話に目を向けた。
リカは黙ったままその場で見ていることにする。
「今、望月ルナは責任がとれないと言った。ならば、俺が望月ルナの罰を決める。望月ルナは罪が償えないので、代わりにルナの監視をしていた望月更夜に罰を与え、罪を償ってもらうこととする。望月更夜、よろしいか?」
プラズマは淡々と告げ、更夜に目を向けた。
更夜はゆっくり立ち上がり、プラズマの前に出ると平伏し、口を開く。
「……はい。この度は申し訳ありませんでした。今後、このような事がないよう、気を付けます」
更夜はプラズマが顔を上げろと言うまで頭を下げ続ける。
ルナは隣でプラズマにあやまる更夜を見て、さらに動揺していた。更夜が他の神に頭を下げるところを初めて見たからか。
更夜が必死で頭を下げている理由が自分のせいであることをルナは深く知る。
「望月更夜、ルナの代わりに罰を受けろ。しばらくいなくなれ。封印だ」
プラズマが更夜に命令し、更夜は深く頭を下げ、「はい」と一言だけ言った。
「まっ……まって!」
更夜がいなくなってしまうことを知ってしまったルナは蒼白な顔でプラズマに叫んだ。
「なんだ、望月ルナ」
冷たいプラズマの声を聞きながら、ルナは必死に言う。
「おじいちゃんは悪くないの!」
「当たり前だろ」
淡々と言うプラズマにルナは震えながらプラズマに向かいわめく。
「ルナからおじいちゃんを奪わないで! お願い!」
しかし、プラズマは顔色を変えずに冷酷に笑った。
「なに言ってんだ、お前。責任をなすりつけたくせに、罰を受ける者を選ぶつもりか? 更夜でいい。お前へのお仕置きにもなっていいじゃないか、まさかお前……お仕置きが尻叩きだと思ったか? 子供だなあ」
プラズマの態度は変わらず、怖いくらいに冷たい。
ルナは大泣きでプラズマにすがった。
「おじいちゃんを返してぇ!!」
ルナが横でわめく中、プラズマは淡々と事を進める。
「望月更夜、何か言うことはあるか?」
「はい、では、ルナに。俺はしばらくいなくなることになる。スズとサヨに説明し、三人で仲良く暮らしてくれ。皆で生活するのは楽しかった。こうなったのは残念だが、俺はお前の罪を償ってくる。プラズマ、ルナを頼む」
更夜の一言にルナは固まり、プラズマはわずかに悲しそうな雰囲気を出した。
「……望月更夜、封印を始める」
「はい」
プラズマは自分の神力を更夜に巻き始める。更夜は目を静かに閉じた。
体が白い光に包まれ、時計の陣が更夜を中へと連れ去った……。