エピローグ
リカは目を覚まし、ゆっくり起き上がった。
ぼんやりしていて、今まで何をしたのかよく思い出せない。
「リカ! 大丈夫?」
アヤがすぐに駆け寄り、リカの背をさする。
「あ、アヤ……皆も」
栄次とプラズマも近づいて来て、リカを心配していた。
「大丈夫か? 何かあったのだろう?」
「怪我はしてねぇようだな」
栄次とプラズマに声をかけられたリカは何をしていたのか必死に思い出す。
「ああ……えっと……ワールドシステム内で栄次さんと更夜さんを助けるのと、『破壊システムに感情を入れる』っていうのを願ってて……後はよく覚えてません。あ、あと、ツクヨミ様にお会いしました」
「……なんでリカが来てからいないはずの神が出てくるんだ? 前回はスサノオがいたな」
リカの言葉にプラズマが頭を抱える。
「破壊システムに感情を入れる……。さっきの少年に突然感情が出たのはリカの力が原因なのかしら」
アヤがリカに尋ねるが、リカは首を傾げた。
「わからない。私はマナさんに……」
「また、そのマナって子か」
「で、ですが、私は栄次さんと更夜さんを助けたくて……」
プラズマの視線が厳しくなったので、リカは慌てて答えた。
「まあ、とりあえずリカが無事で良かったわ。体調は? 大丈夫なの?」
「体調は大丈夫」
アヤがリカを心配していたので、リカは大丈夫なことをはっきりと伝えた。
「結果的にあの少年がいなくなった故、俺達は助かった。あの少年については今後、調べていこう。リカ、ありがとう」
「……あ、そんな大した事は……」
栄次から感謝をされ、リカは小さな声を出しつつ、下を向いた。
「リカの謎についても聞きたいところだな。ルナ、俺の頬を引っ張るな!」
更夜はため息をつきつつ、頬を引っ張るルナを叱っていた。
「おじいちゃんのほっぺ、めっちゃ伸びる! おもしろ~い!」
「え、本当? やってみてもいい?」
スズは目を輝かせてルナに尋ねた。
「いーよ!」
「ルナ! 勝手に返事をするな!」
更夜はルナを叱るが、ルナは関係なしに更夜をいじる。
「あー、あたしもちょっとやってもいいー? なんでそんなに皮が伸びるの? おもしろいんですけどー」
サヨまで更夜の頬を伸ばし始め、更夜はうんざりした顔をした。
「やめろ! ダメだ!」
更夜を見つつ、リカは首を傾げた。
「な、なんか知らない内に賑やかになりましたね?」
「それは後で話す」
戸惑うリカにそう答え、栄次は更夜とスズを見て微笑んだ。
「栄次が笑ってる」
プラズマが驚き、アヤが目を見開く。
「珍しいわね。めったに笑わないのに。笑うとかわいいわね、栄次」
「それは栄次に言わない方がいいな。顔真っ赤にしていつもの顔に戻っちまう」
アヤとプラズマは安堵した顔で足を崩し座った。
「良いこと考えた~! 皆いるし~、おじいちゃんのご飯食べてってよ! すごいおいしいよ~! おじいちゃん、ご馳走よろ!」
サヨが陽気に更夜の肩を優しく叩く。
「お前はいつも勝手に……疲れているんだが……」
「やったー! 皆でごはん!」
ルナが喜び、スズが戸惑う。
「え……皆でごはん? そんなことしたことないんだけど」
「皆で食事か、良いな」
栄次が更夜に微笑み、更夜は頭を抱えた。
「わかった。栄次、手伝え」
更夜はルナを横にずらし、立ち上がる。
「ごはん作るんでしょう? 手伝うわ」
アヤが安堵の表情を浮かべた時、サヨがアヤの肩を抱いていた。
「ニヒヒ、おじいちゃんは料理人みたいに料理が上手! 食べてみて! すんげぇうまいから」
「ふふ、あなた、更夜が本当に好きなのね」
「うん、大好きなおじいちゃん」
サヨもようやく元の元気を取り戻し、いたずらっ子のように笑った。
「んじゃあ、俺はお子ちゃまと遊んでるぜ!」
プラズマがルナとおいかけっこを始め、リカは動揺しながら、あちらこちらを見回している。
「え……えーと……」
「リカも手伝う?」
アヤに尋ねられ、リカは戸惑うのをやめ、元気に頷いた。
「うん!」
「それと、栄次」
アヤが栄次に目を向け、プラズマ、リカも栄次を見る。
「おかえり」
時神達は皆、優しい顔で栄次を見ていた。
栄次は目に涙を浮かべると、
「すまない、ただいま戻った」
と清々しい気分で涙をぬぐい、微笑んだ。
栄次は気がつく。
弱い自分を出しても良い事に。
強くなくても良い事に。
そして、栄次は帰る場所があることを知った。
居心地の良い、仲間達がいる場所。
同時に栄次は誓うのである。
この大切な場所を守らねばならない、過去のものにしてはならないと。