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【序章】

【序章〜創世記〜】


 

 この世界が今の形になったのは、いつの頃なのか、どのくらいの歳月が流れたのか、矮小な人の身では計り知る事は出来ない。

 ただ、語り部達が受け継いでいく物語だけが悠久の時を綴っていく。



 ――世界の始まり――

 果てなど無き混沌の闇に取り巻かれ、唯一絶対神カイオスのみが存在していた。

 生も死も、全てを司る唯一絶対の神・冥王神カイオス。

 カイオス神は全ての森羅万象を見通す瞳と、全ての事象に干渉する強大な力を持っていると言われる。

 己の孤独を嘆いた神は一握りの闇を掴んだ。その手からは煉獄の炎が生まれ、真紅の瞳に燃え盛る髪の男を形作る。

 男の方へと、神は一歩を踏み出す。神の足元からは広大な海が生まれ、オパールの瞳、炎が照らすと危うげに色彩を変える髪を持つ女の姿となる。

 炎と水の狭間の虚無を神は掴む。そこからは風が螺旋を描きながら、蒼い瞳、蒼き髪を持つ男の姿となった。

 そして、神が踏みださなかった足元からは、大地が広がり新芽が息吹く。それは一瞬のうちに大樹となり、深緑の瞳、鮮やかな緑の髪を持つ男の姿になる。

 絶対神カイオスはそれぞれの者に、真名と神格を与え、己と同じ創造する力をも授けた。


 だが、もう一つ残っている事に神は気がつかなかった。

 其は自らの孤独が生みだした狂気。

 認識しない存在に真名をつける事はできない。

 そして――


 その者だけは絶対神の支配から逃れ得る存在。

 狂気を司り、月を支配するその者の名は邪神。


それはまだ吹雪と(いかずち)を操る龍が、空を飛んでいた頃の話。




【水鏡〜もう一つの序章・先見の少女〜】



 磨き上げられた白亜の大理石の床、周りには同じ材質の高い柱が立ち、広く天井の高い部屋の中央には円形のさざ波一つ無い水盤だけがある。

 長い純白の薄衣を纏った少女が、水面に足を踏み出した。

 薄く透きとおる水色の髪と瞳を持ち、それらはオパールのように見る角度で色合いと煌めきを変える。

 まだ年若い。齢十七、八くらいだろうか。肩の無い作りの衣は、彼女の肌の白さを際立たせている。

 綺麗に切りそろえた前髪を額の中心で分け、他は肩につくかつかないかの長さ。少し残っている長い髪は精巧な金銀細工の装飾品で細かい束に分けていた。

 全てを包む静寂の中で、彼女は水盤の中心まで進む。身はたゆたう水に沈むことなく、まるで硬質な水晶の床を歩むかのように見えた。

「我が元へ参れ、海王(かいおう)

 彼女が右腕を高く上げる。手の甲には欠ける事無き円形のオパールが埋め込まれていた。オパールは淡く輝き、そして光となり溶けていく。その光を掴むように伸ばされた彼女の手に、水晶で出来た長い杖が現れた。持ち手の部分は銀で細工され、彼女の手にあった物と同じ大粒のオパールが埋まっている。彫られているのは美しい魚や、人魚、数多(あまた)の水の眷族達。

「全てを見通す水鏡よ、これより起こる災厄、流れゆく時を我に示せ」 

 凛とした美しい声で術式を唱え、少女は水晶の杖で水面を叩く。すると、金属を合わせたような高い澄んだ音色と共に、水盤に波紋が広がっていった。

 そう遠くない未来を見せる水鏡を覗く彼女の瞳には、ある光景が映っていた。

 国や街、村々が焼け落ち、逃げ惑う人々。そして、襲いくる異形の姿をした魔族の群れ。

「戦が始まる、それも全ての国を飲み込むような大きな戦が――」

(でも……)

 彼女は強い意志をその瞳に宿した。

「希望はあるわ」

 焼け落ちた瓦礫の中で――

 傷つき逃げ惑う人々の中で――

 勇敢に戦う者達の姿もまた、水鏡には映しだされていた。



はじめまして、稚拙な物語書きのcleomeと申します。

初投稿になります。日々、精進したいと思いつつ、なかなか思うようにはいきません。

読んで頂けるだけでもかなり嬉しいですが、もし気が向いたら感想、評価(酷評も喜んで伺いたいです)頂けましたら、幸いでございます。

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