第二章 阿修羅Ⅶ
真那は昴をすぐ近くに感じていた。それだけならいいのだがアシュラが周囲にうじゃうじゃいて、おまけに勇人も到着した。
彼女は入り組んだ道を急いだ。反対方向に逃げていく人々と何度もすれ違った。このままでは被害が拡大するばかりだ。昴のことは、後回しにするしかない。
真那は誰もいないコンビニに入った。混乱の中、この店は幸運にも火事場泥棒の被害を免れている。
彼女はスタッフ用の更衣室に入った。誰かに〈我〉の鎧をまとうところを見られたくない。別に決まりがあるわけではないが、人に騒がれるのは嫌だ。
真那を中心に霧が発生する。真那が〈我〉を手繰り寄せて一体化し、物質化させているからだ。
〈我〉を物質化させるのは雪玉を握る感覚に似ている。サラサラと流れる〈我〉を意志の力で受け止め、押し固めるようにして物質化させる。勇人によく似た姿だが、色が藍玉の透き通るような碧だ。
〈我〉と一体化真那は、昴と同じ位置にアシュラがいるのを感じた。
やっぱ、すばちゃん最優先ッ。
真那はコンビニを飛び出し、側にあったマンションの壁を駆け上がった。暴れるアシュラの姿が幾つも見える。その一角で勇人が戦っているのを感じた。
そちらを無視して、象アシュラを目指した。建物の屋根を疾風のごとく移動していく。
視界に象アシュラの足下が飛び込んできた。そこではまさに昴が踏みつぶされようとしている。
「昴ッ」
真那はすぐさま〈我〉を集めアシュラに叩きつけようとした。
だがそれよりも早くアシュラの巨大な足が昴の頭上に迫る。
間に合わないッ。
そう思った瞬間、アシュラの足は、昴の頭のすぐ上でピタリと止まった。
「え?」
その足はだんだん押し戻され、象アシュラは後ろ足で立つ格好になった。さらにその巨体は空中に浮き、グシャッと見えない大きな手で握りつぶされたかのように、あっけなく破壊された。
真那は昴からかつて感じたことのない、強大な〈我〉を感じていた。
信じられない、あたしや先輩たちより、ずっと強い力だ……
昴に一人の女性が駆け寄っていく。よく見ると、昴は子供を庇うようにして倒れていた。




