勇者様とお話をしよう
もう更新しないもんだと思ってたけど書いたから更新。
外の世界に出ようとして、私はペンダントをポーチから出した。ゲームの世界に入る前は肩掛けのバッグを持っていたんだけど、起きたときには腰付けのポーチになっていた。見かけがかなり小さいので少し焦ったけど流石ゲームの世界というべきか、ポーチの中には別空間が広がっていてかなりの収容スペースがあるようだった。しかも便利なことに欲しいものを考えながら手を入れれば一発で出てくるという優れもの。かなり便利だ。
私はすぐ用意ができたのにかかわらず、川田君のブローチがなかなか出てこない。
「遅い」
にらみを利かせながら文句を言った。
「ごめん、見つからない」
「え?」
「いや、だから見つからないんだって」
「ちょっと貸して」
私は川田君からポーチを預かると中身をしっかり調べた。が見つからない。いくら探しても出てこないのだ。
「なくしたの?川田君帰れないじゃん……。なにやってんの」
「ほんとごめんなさい……。奈々ちゃんだけ先に帰っておばあちゃんにペンダントもらってきてもらえない?」
「はぁー、やっぱそうなるかな。しょうがないな、ちょっと待ってて、すぐ戻るから」
「あざーっす、任せましたー」
彼が軽いノリで頼みながら言っているのを聞きながら、私はペンダントを掲げようとした。
でもその時気づいた。
「いや待って、このまま出るとどうなるの?」
「というと?」
「いやだってさ?ゲームの世界にいる間は時間が進まないんだよ?てことはそのまま外に出ると私も止まっちゃう可能性が高いわけ」
「あー……、それはまずいな。こんなところにずっと一人でいて、生きていける気がしないし」
「となるとストーリー終わらせてでるしかないのかなぁ……。結構しんどい……」
このゲームはまっすぐクリアしようとしてもなかなか時間がかかる。そんでもって実際に自分たちが動いてプレイするとなるとまた勝手が変わってくる。これはかなりの長丁場になりそうだ。
そんな私の考えも知らずにこいつは、
「奈々ちゃんがやってんならどうにかなるっしょっ。てなわけで最初はどうすればいいですか!?」
とか平気で言ってくる。腹だたしいたっらありゃしない。
「うるさいな、もうちょっと反省してよね……。まぁ文句言ってもしょうがないですね。最初はベグニの北にあるクストの村に向かうの。そこで村を困らせてる魔物を退治するって流れかな。はぁ……さっさと行って早く外に出ますかね。」
私たちが神殿の入り口前の階段を降り切ったころ、声を掛けてきた人がいた。
「すみません、そこのお二人さん。少し話をきかせてください。」
振り返るとそこには、全身を青色の装備に包まれた、青髪の青年が立っていた。少し傷のついた鎧、しかしそれでいて魔法のような、不思議な美しさを感じる。腰に携えた剣からも同様に、不思議な雰囲気を感じる。髪はほどほどの長さ、そして整った顔立ち。そして、これまた同じように透き通った青色の目。
その容姿に少し見とれてしまった。直後、私は我に返った。
ゲームに出てくる青い人物、それでいてこの好青年。心当たりがあるのは一人しかいない。
「もしかして……勇者のハウトさんですか?」
「その勇者の肩書は僕にはふさわしくないけど、そうだね。僕はサルスード・ハウトだ。」
勇者ハウト。七色の橋においてお助けキャラ的な役割を担っていて、冒険の進み具合に合わせて様々なところに出現する。ただまぁ順当に進んでるときは戦闘には参加してくれないから、ほんとにゲーム慣れしてない人用のキャラクターというイメージが強かった。それでもその端麗な容姿のおかげでかなりの人気キャラだ。私もなかなか好きである。
勇者とはプレイヤーもなれる職業である。
このゲームには職業システムがある。最初は冒険者に設定されていて、経験値の一種であるJPをためることによってその職業についたり、職業のレベルが上がったりする。そんな中に上位の職業として『勇者』が存在する。勇者は接近戦の能力も高く、それでいて回復、攻撃の魔法も使えるといった万能型である。また、サポートについている妖精との連携力も必要とされている。冒険者の中から一握りの人しかなれないと言われている。ゲーム中では主要キャラでハウトと、その他のモブとしての勇者が数人といった感じだった。
「それで?勇者様がどんな用事で俺たちに声をかけたんですか?」
「勇者様はやめてほしいので是非ハウトと呼んでください、お願いします。要件はさっき二人組の男たちを吹っ飛ばしたことについてだね」
勇者様はさっきのやり取りを見ていたようです。
「え⁉いや、待ってよ、あれは勝手に吹っ飛んだだけで」
「いやだなー、そんなわけないじゃないですか、あんなに派手に吹っ飛ばしておいて」
「だから知りませんってっ!」
「そこまで否定されるとは……。大変失礼いたしました。何か特別な能力があるものかと思ってしまいました。」
「そんなものあればよかったんですけどね、アハハ」
「そんな能力もない方が冒険者にと、少し気にかかりますね」
うぐ、痛いところを突かれる。私が少し返答を詰まらせると川田君が口を開く。
「ちょっとこいつには無理行ってついてきてもらってんですよ。俺が体力はあっても知識が全然ないばっかりに」
「というと?」
「ちょっと北の村まで自力で行けないかなって思いまして。でも一人じゃ心細いうえに道も全然わかんなくって。だから一緒に来てもらおうと思って。」
「あぁ、なるほど。一種の実力試しのわけですね。確かにクストの村までならそんなに問題もありませんしね。」
「んだろー」
なんでこんな時だけこんなに機転が利くのかなコイツは。でもまぁ助かったのも事実。あとはこれに合わせて……。
「僕もクストの村の方向に用事があるのでよければご一緒させてもらえませんか?」
「勇者s、じゃなくてハウトがついてきてくれんのか?百人力じゃん!全然お願いします」
あれ?なんか話まとまってない?
「じゃぁ奈々ちゃんここまま向かっても大丈夫?」
「え?えぇ、まぁ、不都合はないかな……?」
「じゃあそういうことで、よろしくな!ハウト!」
なんかあっという間に同行する流れが出来上がってしまった。恐るべしコミュ強。
一年前に考えてたことなんか覚えてないけどこのまま新しいシリーズ作っても一生完結しないから続きで書くぞコノヤロウ!どうなってもしらねぇ!
とりあえず書き進めることが大切なのです、たぶん