ゲームの世界へ行こう
とりあえず書きました、の二回目
1日のうちに上げたかったから上げます。書き直しもするかもです
もし、自分の好きな世界にいけるとしたら。
もし、自分の好きな物語の世界に行けるとしたら。
もし、自分の好きなゲームの世界に行けたら。
私はゲームの世界に行きたい。お気に入りのゲームの世界。行けるとしたらきっとそうする。やればやった分だけできるようになって、鍛えれば鍛えた分だけ強くなる。そんな世界。数字で出るから疑いようもない。しかもレベルなんかになってくると時間をかければ絶対に上がる。確かに技術とかは練習しなくちゃ身につかないけどさ。普通にレベルを上げるだけならどうにかなっちゃう。それに攻略を見ながらだってゲームは進められる。ストーリーも楽しめるし敵を倒した達成感とかも感じられる。それで十分じゃん、楽しいし。ちまちま素材をコンプしていく。敵をバッタバッタなぎ倒す。普通に楽しい。
私はそんな風に考えていた。まさかこんなことになるなんて思っていなかった。どうしてこんなことになっちゃったのか。
これはそんな私の物語。
……
昔、世界は1つだった。世界を構成する者たちの均衡は保たれていた。不自由なく、問題なく保たれていた。世界は満たされていた。しかし、ある時、対になっていた光と闇が外れてしまった。世界の均衡は崩れた。今まできれいに釣り合っていた世界は崩壊を始めた。崩壊をきっかけに、次々とほかの者たちも離れていった。炎、水、風、土、そして最後に鋼。世界は空っぽになってしまった。元の世界には何も残っていなかった。
光が無くなり、明るさを忘れた。
闇が無くなり、安息を忘れた。
炎が無くなり、温もりを忘れた。
水が無くなり、潤いを忘れた。
風が無くなり、流れを忘れた。
土が無くなり、恵みを忘れた。
鋼が無くなり、技術を忘れた。
今まで1つだった者たちは、7つに分かれた。それぞれが独立して、それぞれが新しい世界を構築した。しかし、もともと7つの者たちによって安定させられていた世界は、それぞれが独立して構築して安定するのか。否。それらは当然不安定な世界になった。
世界は不安定になった。
世界の秩序はなくなった。
世界を守るすべはなくなった。
そんな世界を救うために、元の世界に戻すために、世界中の「冒険者」と呼ばれる者たちが旅を始めた。安定した世界を取り戻そうと、バラバラになってしまった世界をつなごうと旅を始めた。
困難なことは必ずあるだろう。
逃げ出したくなることもあるだろう。
理不尽なこともあるだろう。
しかしどんな時でも立ち向かわなくてはならない。ともに旅をする、ともに立ち向かう仲間がいるのだから。
あなたはそんな冒険者のうちの一人として、旅を始めようとする者である。
……
こんな文句で始まるゲーム、「七色の橋」は、私、弓上奈々の大好きなゲームだ。追加データの配信が多く、ストーリーもしっかりしていて、キャラの育成もたくさんできる。私は重度のゲーマーだ。そりゃもうやばいくらいに。公式の小技から噂レベルの裏技まで大体やってみた。これ以上キャラクターを育ててどうするの?ってレベルまでキャラの育成は済んでいる。やっていないことといえばストーリークリア後に能力を引き継いで2周目をできるってことくらい。ステータス以外のアイテムとか図鑑とかのコンプ要素は全部リセットでもったいないからまだできないでいる。でもそのうちやろうと思ってる。
そんな私は今、見知らぬおばあちゃんのお手伝いを川田遊希とやっている。
私は下校中に駅で、地図を見ながら困っているおばあちゃんを見つけた。そこで「何かお困りですか?」と声をかけたのだ。
時間的には夕方、街は夕焼けで赤く染まり始めている。駅は家に帰る人たちで少し混雑していた。おばあちゃんの顔にはしわが刻まれていて、かなりの高齢に見えた。こういう人が困っていたらちょっと助けたくなっちゃうから声をかけてみた。そうしたら、おばあちゃんは道に迷っていたらしい。最近開発が進んだおかげで駅の地形もかなり変わっていたから仕方ないかなと思った。それで、そこまで案内をしてあげることにした。
おばあちゃんの足元には使い古された、紫色の風呂敷があった。一緒に歩き始めたらそれを重そうに持ち上げたから、それ持ちましょうか?と聞いた。それじゃあお願いしようかなと言われたのでいざ持つと、これが意外と重くてつらかった。で、ちょうどこのとき、さっきの川田遊希が声をかけてきた。奈々ちゃん大丈夫?って、うっざいなこの。まぁいいや、彼はがっつり運動系バカって感じだから仕方ない。で、まぁなんやかんやでこいつが荷物を持ってくれることになったからそれに甘んじた。で、最終的に目的地に着いた。
おばあちゃんが探していた処は、駅から少し離れた裏路地にある小さな建物だった。日が暮れ始めているころだから余計に暗く見えて少し不気味だ。大通りからも少し離れていて、一人だったら絶対に来たくないタイプの道かな。
「えぇっと、この建物ですね」
と私は告げた。
「おぉ、そうかいありがとねぇ」
とおばあちゃんはお礼を言ってくれた。川田君も
「じゃ、おばあちゃんこれ」
と言ってさっきの風呂敷を返しながら、川田君は聞く。
「これの中身って本?」
「そうねぇ、本もあるねぇ」
「なんの?」
「しいて言うなら魔法の使い方の本かね、こういうね、ほれっ」
するとさっきまで川田君が持っていた風呂敷が浮かび上がった。
あたりは一瞬静寂に包まれた。
遠くでカラスが羽ばたく音が聞こえる。
都会の喧騒が一気に遠くなった。
世界から切り離されたように感じる。
は……?、何言ってんの?私は耳を疑ったし、目も疑った。魔法の使い方の本といっても手品の類じゃないかと疑い始めている。あれだけ重いのならいくらでも仕掛けはできる。でも、
「おぉ、すげぇっ、おばあちゃんこれすごいよっ」
とテンションダダ上げの川田君が騒いでいてうるさい。
「これって手品とかじゃないの?」
と私は尋ねた。
「いいや、正真正銘の魔法さね。まぁそんなに人前でポンポンつかっていいものじゃないから存在は知られていないけどね」
「そんなものを見せてもらってもいいんですか?」
「いやぁね、困ってるあたしを助けてくれる程度に優しい人なら信用できるからね。あと、どうしようかねぇ、せっかく助けてもらったんだからお礼の一つや二つをしておきたいね。何かかなえてほしい願い事とかはあるかい?」
私は疑ってかかってたが、なんだかお礼を言われるとわるい気もしないね。しかも優しいっていわれた。なかなかうれしい。さらにお願いをきいてもらえるのか。あんまり信用できないけど。まぁ無理だったら無理だったでいいか。
「おぉ、すげー、いいの?」
川田君はすごい喜んでいる。
「おばあちゃん、それって何をしてもらえるの?」
と私が尋ねると、
「だいたいなんでもできるかなぁ、世界征服とかでなければねぇ、あはは」
と返ってきた。これはなかなか夢が膨らむね。ちょっとだけ信じてみようかな。
何がいいかなと思案していると、七色の橋を思い出した。
「例えばですけど、物語の世界に行けたりってできますか?」
「おぉ、それくらいなら全然余裕だねぇ。」
意外と頼もしい返事がきた。おばあちゃんは風呂敷の中身を探して、ちいさな物を取り出した。赤い、かわいい花のペンダントだった。
「物語の世界に行くのに必要なのはこれさ。このペンダントを行きたいと思っている世界があるものの前で掲げて、その世界に行きたいと強く願う。するとその世界への扉が開かれるのさ。そしたらその扉をくぐればいい、その世界にすぐ行ける。」
これは、すごい。私はそう思った。これなら七色の橋の中に入って楽しめそう。
「へぇ、すごい……。じゃあおばあちゃん、それを貸してほしいです」
「おぉ、そうかい。まぁ、貸してあげるんじゃなくてもうあげちゃうよ。じゃあ、注意点だけ説明しておくよ。まずは、物語のなかにいるときにしていけないこと。物語を大幅に変えるようなことはしちゃならないよ。たとえば、赤ずきんちゃんの世界に行ったとする。そうしたら、狼が家に着くより先に赤ずきんちゃんが家に到着しちゃならない、物語が変わってしまうから。これが起きると物語のまきもどしが発生する、気を付けておくれね。二つ目は時間に関して。物語の世界にいるときはこっちの世界の時間が進まない。基本的にいくらいても大丈夫だね。まぁ一度にあんまり長い時間いることはおすすめしないけど。最後に物語から出る方法。これは簡単さね。物語を最後まで進めればいい。もしくは、ペンダントを掲げて外に出たいと強く願えばいい。注意点はこれくらいだね。それじゃあどうぞ」
「ありがとうございます!」
私はそう言ってペンダントを受け取った。意外と詳しく説明されたのでちょっと楽しみになってきた。
「じゃあ、俺にもそれください」
と、川田君も言った。何言ってんのこいつ。そんなに適当でいいのか。私はそう思った。まぁ関係ないけど。
それから少しお話をしてから、おばあちゃんとは別れた。
その帰り道で、
「奈々ちゃんは、どういう話にいきたいの?」
と、川田君は聞いてきた。こいつ手伝ってくれた時はなかなか気は利くと思ったけど、こうなるとやっぱプライベートもなにもないな。
「どこでもいいでしょ……」
私は適当にあしらった。したら、かなり悲しそうにされた。これは良心が痛む。
「七色の橋っていうゲームに行ってみたいなって。」
「へぇー、そうなんだ。俺も行ってみたいな。一緒に行ってみてもいい?」
川田君はいきなり言ってきた。こいつには距離感をいうものはないのか。
私たちは別段に親しいというわけでもない。クラスが三年間一緒ってだけだ。とくによくしゃべったりする訳でもない。こいつはクラスの中心で騒いでるけど私は端っこのほうで本を読んだり、友達と雑談をしたりしている。ほんとにあんまり関係がない。のにこの距離感、尊敬するね。
しばらく無言でそう考えていると少し元気がなくなってきた。さすがにかわいそうだから、ちょっとならいいよと言った。すると嬉しそうに、
「おっ、サンキュー!たのしみだわー。いつ行くの?今からとか行く?」
って。つっこんでくるよなほんと。
「今試してみようかなって思ってた。ここにゲームもあるし」
なんで今も持ってたんだろうってちょっと後悔した。どうせすぐ別れるだろうけどね。
「おっ、じゃあ今から行こうぜ」
「はぁ、仕方ないな。やってみようか。」
そう言ってゲームを出してペンダントを掲げて七色の橋の世界に行きたいと願った。するとほんとに目の前に円い扉が現れた。
「おぉー、すげぇなこれ。」
「そうね。とりあえずくぐってみましょ。」
こいつはすごいテンションが上がっている。かくいう私もかなりドキドキし始めている。隣にうるさいやつがいるけど、ちょっとしたら一回出てからまた一人で入ればいいかななんて、そう思いながら私たちは七色の橋の世界へ旅立った。
簡単に帰れなくなるともらずにね。
女の子二人よりこっちのほうがいいかななんて。
読んでくれた方に感謝です。
また続くかわかりませんが前より書きやすいはず……。