「8話」探索
一週間空いてしまった。
シャマル達は、街の全容を確認しようと街の中を歩いていた。
その時、シャマルは悩んでいた。
とても、すごく、果てしなく。
「なんでこんな奴らを……」
彼の心は、言葉になって口から出ていく。
まぁその原因の二人は、後ろで子供みたいな口論をしていたりするのだが。
「酒臭いですよ! 昼間から酒飲まないで下さい!」
「おうおう、まだ酒飲めねぇからって嫉妬かぁ? 酒なんてのは大人な俺様にとっちゃ水も同然なんだよ」
話題こそ酒であるものの、基本的には子供のようだ。
シャマルは、どうにかしてこの2人を止めたかった。
あまり関わりたくない気持ちもあったが。
「そういえばお前はなんて名前なんだ?」
シャマルは二人の会話を遮ってその2人の内の片方、白衣を着た男に話しかけた。
「ああ、まだ名乗って無かったっけか? サイラスって言うんだ。よろしくな」
「そうなのか、よろしくなサイラス」
「あぁ」
サイラスと言う男は、20代中盤〜後半くらいだろうか。
まぁ、12歳ほどの少女と口論しているくらいだから、精神年齢はかなり低いんだろう。
シャマルはそんなことを考えながらも次の話題を探す。
ここで話を終えてしまったらまたさっきの様な口論を聞かなければならない気がしたからだ。
「あ、そういえばだけどパールってあの時何したんだ?」
「あの時って?」
「ほら、昨日草原でお前が白い狼になった奴だよ」
話題作りの意味はもちろんあったが、純粋な疑問でもあった。
「あぁ、あれは『レイト』って言う魔法で、他の生き物に変身できるんですよ」
「へぇ、生き物だったら何にでもなれるのか?」
「まぁ、私の数倍くらいの大きさまでなら大体の生き物には変身できますけど、本物に比べると身体能力はかなり劣りますね。訓練すればもっと大きな生き物にもなれたり、本物と同じくらいの身体能力になったり、使い道は多いですよ」
「そうなんだ。じゃあ、草原まで出てこれたのも何かに変身して来たからって事か?」
「そうです、来る時は猫になって来ました。猫ならそれなりに小さくてバレにくいですし、なにより早いですから」
「便利な魔法なんだな」
シャマルとしては、この情報は値千金。
いざ危険な場面になったら素早い動物になって逃がすことも出来るわけだ。
「にしたって『レイト』って叫ぶだけで何にでもなれるのは凄いな」
「でも、大きい生き物とか、強い生き物になる程体力の消耗も激しいですから、使い所を見極めないとダメですけどね」
「制限もあるんだな」
こんな話をしている間にシャマル達は街中を見て歩いた。
「でもよ、冒険に行くって事は食いもんも沢山いるんだよな? どうすんだ?」
サイラスが少しの疑問を口にした。
「あ……」
「あ……」
当然の事を忘れていて、全員固まってしまった。
冒険のためには、まず食べ物を確保しなければならない。移動手段も徒歩しかないという状況だ。
こんな状況から冒険ができるのだろうか。