「6話」空気の読めない男
短いです。
「勇者様…」
その小さな呟きは、少女が目を覚ました合図。
目覚めた少女の視界に入るのは、見たこともない木造の部屋。
「どこ……?」
少女が部屋を見回していると、隣のベッドに眠っている勇者が目に留まる。
「勇者様!」
「起きたな、なんか変な所ねぇか?」
声が聞こえたのは、勇者からではなく、部屋の端から。
その声の主は、少し汚れた白衣を着た、メガネで無精ヒゲの男。
少女は、その男に問いかける。
「ここはどこですか? 勇者様は…」
「病院だよ。そこの勇者ってやつが連れてきたんだ。疲れて眠ってるだけだからすぐ起きるだろ」
その言葉を聞いて
少女が抱いた感情は、まず安堵。
自分が助かったこと、そしてシャマルが眠っているだけということ。
その次に、大きな大きな感謝がこみ上げる。
「勇者様……! ありがとうございます…………!」
涙を手で拭いながら、勇者の寝顔に感謝を送る。
だが、白衣の男はそこに割り込んだ。
「おいおい、実際に治療したのは俺だぜ? ったく、こんなガキを草原に連れてくってのに治療魔法の一つもねぇのかよ」
少女は
男の、呆れたようなその声を、声を荒らげて否定する。
「違います! 私が勝手について行ったんです! 勇者様は……私を助けてくれたんです!」
「まあ、どうでもいいけどよ、今後ろで、その勇者様がお前を見てるぞ」
「え……?」
少女は、顔を赤らめて、ゆっくり、ゆっくりと振り返る。
そこには、これまた少し恥ずかしそうなシャマルの姿。
「いつから聞いてたんですか……?」
「……聞いて……無いけどな……」
これは苦しい。あまりにも苦しい。とここに居る誰もが感じていた。
だが少女は、このまま追求すると自分もノーダメージでは済まない。そう感じた。
「そうですか……」
二人で楽しくやっている所に、やっぱり空気の読めない男が割り込んでくる。
「何言ってんだ。勇者様ありがとうってところから聞いてただろーが」
「言わなくてもいいだろ!」
少女は顔を紅に染め、シャマルは、食い気味に否定する。
「けっ、めんどくせー奴らだな」
悪態をつく男。
シャマルは、それを無視して話し出す。
「それより、まだ名前聞いてなかったな」
少女に向けて話しかけたのだが、何故か男が答える。
「ん?俺か?俺の名前は…」
「お前じゃない!」
「私ですか?私の名前はーーーー」
「リカルド・パールです」
とりあえず一章終了かなってとこです。
こっからは書ける時に書くので、毎日投稿じゃなくなるかもです。