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元魔王の転生勇者は魔界の者を倒せない  作者: 浮幽精
第一章 初めての出会い
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「5話」白狼の疲弊

視界の煙が晴れていく。

シャマルは、その中に何かを捉えた。

それは、先程まで自分たちを追ってきていた黒い狼たちとは似ていながらも、明らかに違う。


そこには、透き通るように美しい白い狼の姿があった。


突然、現れた。

敵か味方か分からない。が

白い狼は、黒い狼達と向かい合って、体を低くし、いつでも飛びかかれる体勢を取っていた。


ひとまず、現時点では敵じゃないと判断して、シャマルは戸惑いながらも、あくまで狼たちから意識は外さず、居なくなった少女を探す。


まだ少し残っている煙を手で晴らす。


「おーい! 聞こえるか! 返事しろ!」


やはり返事はない。

何度も辺りを見渡しても

居ないものはいない。

見えないものは見えない。


どこにいるんだ。

生きているのか。

まさか…………


シャマルの頭に、最悪の思考がよぎる。


さっきの光に乗じて、『ヴェルフ』達に…


ダメだ。こんな事じゃ見つかるわけがない。


その時後ろで、地面を蹴る音がして、シャマルは素早く振り返る。

すると目の前で、大きく地面が抉れ、砂埃が舞い上がった。


それと同時に『ヴェルフ』に飛びかかる白い狼。

ヴェルフ達は、素早く後ろに下がる。が、白い狼の方が僅かに早い。


白い狼の鋭く伸びた爪が、一匹のヴェルフに裂傷を負わせた。

その後も切り裂き、噛みつき、抑えつける。


すると、他の4匹のヴェルフ達は、そのヴェルフを置いて逃げていく。

そんなことに構わず白い狼は、ただ1匹のヴェルフに噛み付き続ける。


すると、火事場の馬鹿力なのか

そのヴェルフが白い狼を押し退けて、首元に噛み付く。

白い狼は大きな悲鳴をあげて、首元のヴェルフを振り払う。

振り払われたヴェルフは、他の4匹の後を追いかけて帰っていった。


シャマルは、傷付いた白い狼に近寄っていく。


「大丈夫か!」


傷付いた白い狼の首元に、自らの服を破り、巻き付けて止血する。

ひとまず、脈を取ってみるが明らかに早すぎる。

呼吸は弱く、不規則だ。


「ヒュー……ヒュー……」


弱々しい呼吸の音が、シャマルの心配を増幅させる。


だが、少女を探さなければ。

見つけなければ。

こんな所であの歳の少女が一人など、危険すぎる。

だが、今目の前で、一匹の動物が瀕死寸前になっているのも事実


どうする……。

どうする…………。


「ューヒャ……ハマ」


弱々しいが、声が聞こえる。


「どこだ! 返事できるか!」


だが、声の位置がわからず、返事を求める。


「ューヒャ……ハマ」


確かに、聞こえるのだが。


「どこにいるんだ……」


すると、シャマルの背中に何かが触れる。

白い狼の足が、ほんの僅かに当たっているのだ。


瞬間、シャマルは思い出す。

少女の言葉、行動の全てを。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「確かに私に力はありません! ……だけど!」


「レイト!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あの時少女が言い淀んだこと。

そして、謎の『レイト』という言葉。


まさか……。


「お前が……?」


その視線の先に居るのは、少女とは無縁に見える、白い狼。


「ューヒャ…ハ……」


白い狼の言葉が止まる。

呼吸は更に弱くなって来た。


「お前なんだな……!」


白い狼は、ゆっくりと目を閉じていく。

が、確かに。確かに。

頷いたように見えた。


シャマルは、その白い狼を背負って

走り出す。


一番近くの街に着き、病院を探す。


「あった……!」


古びた建物だが、間違いなく病院である。

シャマルは、その中に駆け込んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ん……ふぁあ……」


「ん?起きたか」


起きたばかりの少女の視界に入ってきたのは、古い木造の見たこともない部屋。

それと、無精髭を生やした白衣の男。


そして、疲れているのか、隣のベッドで休んでいるシャマル。


「勇者様……」


少女は小さく呟いた。












自由に展開していくスタイル

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