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元魔王の転生勇者は魔界の者を倒せない  作者: 浮幽精
第一章 初めての出会い
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「3話」迂闊な勇者

2017/9.15少し修正

何も無い草原でシャマルは歩いていた。

どれだけ周囲を見渡しても、人間はおろか魔物すらいない。


突然何も無いはずの背後から、幼く、柔らかな声が聞こえる。

「勇者様! 私を相棒にしてください!」

シャマルは驚き、咄嗟に腰から剣を抜いて、ふりかえる。


「誰だ!」

喉元まで伸びて来たその剣を見て、そこに居た少女は、両手を上にあげる。

「ひっ!? ご、ごめんなさいっ! 」


シャマルは、その白い髪の少女を見て、少し警戒を緩めて、剣を腰の鞘へと収める。が、完全に警戒を解いた訳では無い。

まだ剣から手は離さない、いつでも抜けるように構えている。


そもそもこんな子供が、魔物が出るこの草原に居るはずがないのだ。

仮に居たとしても、すぐ魔物達に襲われておしまいだろう。

恐らく12歳ほどであろうか、とても小さな少女だ。

陽の光に照らされるその白い髪は、肩のあたりまで伸びていて、青い瞳がこちらを見つめている。


「こんな所で何をしている。どこの子供だ。」

緊張感が漂う中、その少女に尋ねる。


すると少女は、ムッとした顔で

「子供じゃないです! 私は勇者様の相棒になりたいんです!」と返した。

シャマルの質問は全て無視されているのだが。


「その話はお前が、どこの子供か分かってからだな。」

シャマルがそう告げると、少女は焦ったように震えた後、諦めたよか質問に答える。

「……ミデリアン……です。」

ミデリアン、シャマルが先程までいた国だ。


「そうか、なら帰るぞ」

シャマルは、その少女の襟元を掴み、地面に引きずりながら、来た道を引き返す。


「ちょっとちょっと!!話が違うじゃないですか! さっき、どこの子供か言ったら話を聞いてくれるって!」

少女は、足と手を可能な限りバタつかせ、抵抗する。が、

そんなことには構わず、シャマルは歩みを続けながら答える。

「子供じゃないんじゃなかったのか?」


少女は、しまった!と思ったように首を左右に激しく振る。

「ちっ、違いますよ! そんな話じゃなくて! 話を聞いてくれるって!」

何度も訴えかけるその少女はきっと、また付いて来ようとするだろうと考え、シャマルは、ひとまず手を離す。


「とりあえず話は聞こう。だが、魔物に襲われるかもしれないから、あそこでだ。」

その指の先には、少し小高い丘がある。

シャマルは、見晴らしのいいその丘ならば、ひとまず安全だと考えたのだ。


その答えに、少女は目を輝かせ、ない尻尾を激しく振っているようだった。

「はい!ついて行きます!」

その丘まで、という意味なのだが、旅にまでついてきそうな勢いだ。


2人は、その丘まで歩く。

その少女は、シャマルの後ろで嬉しそうな顔で、鼻歌を歌いながらついて来ている。

その手は、シャマルの袖を握りこんでいる。


ひとまず丘に着き、話を聞くことにする。

「で? なんでこんな所に来たんだ?」

すると少女は、全く迷わず言い切る。

「勇者様の相棒になりたいんです!」


「俺の旅に同行したいって事か?」


「いえ! 相棒になりたいんです!」


「相棒なあ…」

シャマルは、呆れたように少女を見つめる。

頭から足まで、どこを取ってもまるで戦力になりそうにはない。


「なんですかその目は!私だって戦えますよ!」


先程までと同じ体勢、同じ力量で少女を見つめる。


「なっ……! なんて失礼な目線を! そんなに疑うなら見せてあげます! 行きますよ……!」

少女は片足を少し引くと、地面を強く蹴り出し、シャマルの喉元へと飛びかかる。

が、身長が低いのだ、当然腕も短い。


シャマルが頭を押さえると、手をバタバタと動かしてはいるものの、全く届いてはいない。

シャマルは、ちょっとしたいたずら心で手を離す。


すると、今までシャマルの腕にかかっていた体重が行き場を失って、少女は柔らかな草の上に倒れ込む。


少女は、痛みの発生源である頭を押さえながら、少し涙ぐんだ目を、シャマルへと向ける。

すると、もう2回ほど見た目線で少女を見つめていた。


「分かりましたよ! …… 私には勇者様ほどの力はありません、だけど……!」


その時、丘の下から飛び出して、二人を囲む五つの黒い影。


瞬間。シャマルは思う。

迂闊だった。少女との会話に気を取られていた。

いくら見晴らしが良いと言っても、意識を持っていなければ。


ここにいる魔物は野生なのだから、餌を取るための武器はいくつも備えている。

その中でも、『気配を消す』それは餓死しないための絶対的必須技能。

忘れていた。脳内で、何度も自分を叱りつける


その五つの影、黒い狼たちが、二人めがけて飛びかかる。

シャマルは寸前の所でそこから飛び退きながら、少女を攻撃の範囲から出すために、こちら側へと引っ張り出す。


シャマルは、狼たちがこちらを向くよりも早く立ち上がり、少女を抱えて走り出した。


ちょっと動きが出てきました。

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