「11話」アラサーだって誤魔化します
「よしロンダー商会行こうか」
「そうですね」
パールとサイラスは扉を開けようとした所で何かが引っかかる。
「なんだ?」
二人で体重をかけて全力で押す
「いててて! 痛い! ちょっ何!」
「あ、魚だ」
少しだけ開いた扉の隙間から、臭い魚が顔を出す。
「魚じゃねぇよ!」
「魚だよ!」
扉に引っかかっていたのは、魚を抱いたシャマルだったわけだが。
シャマルは、扉と反対側に転がって臨戦態勢をとる。
剣の代わりに魚を構える。
もう腐りかけている魚が重力に逆らえるはずもなく、地面に向けてだらーんとシャマルの腕にぶら下がっている。
「てか、昨日そのまま寝たの?」
「ああ! 一体勇者ってなんだろうな!」
「勇者だったっけお前」
「認識すら危ういのかよ!」
「シャマル様シャマル様! 私は辛うじて覚えてますよ!」
「相棒志願した奴でも辛うじてかよ! 鮮明に記憶しろ!」
意外と人間界に溶け込んでいるシャマル。
魔界でも魔王でありながら魔物達の良き相談役でもあった事も、人とすぐに溶け込める才能に一役買っているのだろうか。
魔王の地位を奪われて、勇者の地位も危うくなってきたシャマル。
だけど同時に、心地よくも感じていた。
「じゃあ行くぞシャマル、どこ行くか分かってるか?」
「いや、でもついてくよ」
「そうか、じゃあついてこい」
「あいよ」
サイラスはいつもしないくせに白衣のポケットに手を突っ込んで、二人を誘導した。
街を練り歩き続けて30分。
町外れの林の入口まで来た3人。
サイラスはそこで立ち止まり、林の方を見たまま後ろの2人に話しかけた
「どんな気分だお前ら」
「なぁ、迷ってんだろお前」
「何の話だ?」
「いや、ロンダー商会の所に行くって」
「フハハハハハハ! そんなことを信じていたのか! 俺はお前を倒すための魔界の者なんだよぉ!」
「な、なんだってぇ!?」
「シャマル様、この人は魔界の者なんかじゃないです」
「なんでそんなことが分かるんだ!」
「だってちょっと泣いてますもん」
「え?」
パールの言葉通り、サイラスは泣いていた。
誤魔化そうとした結果の今の嘘だ。
「なんでそんな嘘ついたんだよ」
「だって!26歳が迷ってんだぞ! 恥ずかしいだろ!」
「この状況の方が恥ずかしいんだよ! 迷って嘘ついて泣いてる26歳だぞ!」
「三人中二人が馬鹿ってどうしようもないですねこのパーティ」
「まさかとは思うけど二人目の馬鹿ってのは俺の事かな?」
「シャマル様以外居ませんよ」
「誰が馬鹿だよ!」
「お前だよ!」
「お前もだろ!」
「二人共です!」
パールはパールで馬鹿なのだが、他2人が尖りすぎているからそれどころじゃないのだ。
「まぁいいです、私は道わかってるんで行きますよ」
「分かった」
「俺は自分が迷った振りをすることによって、お前に花を持たせようとしたんだよ!」
「見苦しいですよ!」
その後ロンダー商会の畑に着くまでサイラスは涙目で黙り込んでいた。
ボケまくりの割に内容無くてすみません!




