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父と兄が帰ってきた。
二月ぶりに、父と兄が帰ってきた。
父は行商人だ。担当の地域をあちこち回っているから、二月に一度くらいしか帰って来ない。
兄も見習いとして付いて行ってるので、普段は母と二人暮らしだ。
「ティン、ほらお土産」
兄が貝殻をくれた。
「中身は?」
綺麗な青色だけど、食べられるほうがいい。
「ティンはまだまだ子供だなあ」
兄が笑うけど、小さい頃のほうが喜んだと思う。それに、まだ10歳だ。子供で何が悪い。
「ティニア、これはどうだ?」
父が服をくれた。ビラビラしている。
「もっと動きやすいのがいい」
そう言って、服を返す。やっぱりまだ早い、と兄が笑う。
父には悪いけど、女の子らしい服は嫌いなのだ。
「母さんにはコレ」
父が別の服を手渡した。
「あら、すごく手触りがいいわ」
母の嬉しそうな顔に、父も満足そうだ。
久しぶりに家族が揃って、その日は笑いが絶えなかった。