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怖がっていた。
部屋に案内されると、アルディクが心配そうに言った。
「魔獣が村までやって来ないかな」
「森に封じ込めたと言っていたから、大丈夫だ」
父が答えた。
「ハンターたちが来てるなら、大丈夫だよ」
ガハトさんもそう言って、アルディクを安心させようとした。
「アルは、魔獣を見たことがあるの?」
私が訊くと、ない、と答えた。
「どんな魔獣が出たんだろうね」
村の人たちは、誰も魔獣を見ていないそうで、その姿などについては何も知らなかった。
ただ、ハンターの人たちが、イグニはとても危険な魔獣だから、絶対に東の森には入らないようにと言っていたそうだ。
「イグニって、どんな魔獣なんだろう」
アルディクが言った。まだ不安なようで、耳が垂れている。
「ハンターが仕留めてくれるから、きっと大丈夫だよ」
そう言って、私はアルディクを宥めた。
その夜は、意外に怖がりなアルディクが眠るまで、話に付き合ってあげた。




