竜だと言った。
巡回士の人は、グラドと名乗った。
「…その生き物は、もしかして竜か?」
グラドが、クーちゃんを見て言った。
「竜!?」
ガハトさんが、驚いてこっちを見た。
「ただのトカゲです」
私はもちろん、そう答えた。
「…。トカゲに角や羽は無いだろう」
「珍しいトカゲなんです」
グラドがうろんな目で見ている。私の言ってることを、全く信じていない目だ。
「竜というのは、えらくデカい生き物なんでしょう?」
父が言った。援護してくれるようだ。
「…子供なのかもしれない」
グラドが、少し自信なさげに言った。
…子供なのは合っているのだが。
(いや、生まれてもう六年だから、子供じゃないのか)
トカゲ年齢では、もう大人だろう。
「とにかく…」
グラドが何か言いかけたところで、森からまた一人、男が現われた。グラドと同じような旅姿で、馬を二頭引いている。
「グラド、どうしたんだ?」
新たに現われた男が言った。グラドの連れらしい。
「あなたも、巡回士の方ですか?」
父が、現われた男に訊いた。
「ああ。そうだが…」
男は、この場の状況が判らずに困惑している。
「やっぱり竜なのかな…」
アルディクが呟いた。
そういえば、アルディクもクーちゃんを竜だと言ってたな、と思い出した。
(まさかね…)
なんだか、嫌な予感がした。




