セト村を出発した。
翌日。
店開きの間、海ばかり見ていたら、子供たちが色とりどりの貝殻をくれた。
昔、兄にも貰ったことがあるけど、その時とは違って嬉しかった。
海に泳ぎに誘われたけど、父の許可が貰えずに行けなかった。
(せっかく海に来たのに…)
見ることしかできないなんてガッカリだ。
(でも、また来られるし、次は少しくらい海に行く時間があるかも)
そう思って、諦めた。
セト村を出発する時は、今までになく名残惜しかった。
また来てね、と子供たちに言われて、絶対来る!と、心の中で応えた。
村が見えなくなって、しばらくは海を見ていた。それからハッと気が付いて、村の人たちに貰った食べ物をクーちゃんに与えた。
干し貝を手に持って食べているクーちゃんが可愛い。
アルディクを見ると、まだ海を見ていた。
「また来ようね」
そう言うと、嬉しそうに笑ってうなずいた。
それからはクーちゃんに、二人で色々な物を食べさせた。おやつ用にと貰った物がほとんど無くなってしまったけど、クーちゃんの満足そうな様子を見ていると、幸せな気分になれた。
クーちゃんを連れて来て良かったと、心の底から思った。




