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サジェスタン村を出発した。
翌日も、双子の兄弟は私たちにまとわり付いて、何かと話を聞きたがった。
その相手をしながら、父たちが店を開いている間待って、片付けを始めると手伝った。
…双子も手伝ってくれると言ったけど、父が断っていた。
出発の時は、双子の他にも子供たちが来て、次は自分たちにも話を聞かせてくれと言われた。
それから、村の皆で見送ってくれた。
次は、海辺の村に向かっている。
兄から海の話は聞いていたけど、見るのは初めてだから楽しみだった。
「アル、海って見たことある?」
アルディクに訊くと、ないと言った。
「じゃあ、楽しみだね!」
私が言うと、アルディクは首を振った。耳がヘタレている。
「塩水ばかりで、落ちたら死んじゃうんでしょ?」
「えー!?青くてキラキラして綺麗で、美味しい物がたくさん採れるんでしょ?」
「…そうなの?」
アルディクの耳が立った。
「お父さんもディーも、そう言ってたよ」
私が言うと、途端にアルディクの顔が嬉しそうに輝いた。
「美味しい物、楽しみだね!」
初めての海にワクワクしながら、二人で道の先を見つめていた。




