ソルディ村を出発した。
翌日。
店開きをした後、ソルディ村を出発した。
街道をしばらく行くと、森が見えた。久しぶりの森に、なんだかホッとした。
森に入って、クーちゃんを放した。…けれど、すぐに戻ってきた。
「クルル」
何か言いたいらしいが、分からない。アルディクと二人で首をかしげていると、諦めたように鳴いて、飛び去っていった。
「なんだったのかな?」
アルディクが言うが、クーちゃんの言葉が分からないのだから、私にもサッパリだ。
クーちゃんの言葉が分かる方法が何かないかと考えていると、街道の先から獣の唸り声がした。
「熊だ!」
ガハトさんが言った。
父が急いで馬車を止めた。すぐ後に、その姿が見えた。
「クーちゃん!」
クーちゃんが、大きな熊に噛み付いている。
熊は、クーちゃんを追い払おうと暴れているが、手や口の届かない所ばかりを狙って噛み付かれるので、追い払えないでいる。
そのうち、熊はあちこち血だらけになり、悲痛な声を上げて逃げていった。
「偉いぞ、トカゲ!」
父が言った。
(トカゲじゃなくて、クーちゃんだってば!)
私は心の中で文句を言った。
「スゴい!クーちゃん!」
「凄いな、そのトカゲ!」
アルディクとガハトさんが、口々に賞賛した。
「クルル」
クーちゃんが得意げに鳴いて戻ってきた。
「クーちゃん、偉いよ!」
「クルル」
褒めながら撫でると、嬉しそうに頭を擦りつけてきた。
「クーちゃん、熊がいるって言いたかったんだね」
アルディクが言った。
やっと、クーちゃんの言いたかったことが分かって、二人ともスッキリした。




