カタル村を出発した。
「ティンはモテモテだったな!」
カタル村を出発してしばらくすると、スーシェさんが馬に乗って話しかけてきた。
「…外の人は皆、あんなに聞きたがりなの?」
「まぁ、ここじゃ娯楽が少ないからな」
父が困ったように笑った。
父も色々なことを訊かれていた。主に、私のことだったような気がするが。
カタル村の人たちは、歓迎も凄かったけど、見送りも賑やかだった。
特に、私に話しかけてきた少年たちが、また来てね、とうるさかった。…そんなにエルフに会いたいのなら、私たちの村に来ればいいのに。
「次の村は、どのくらいで着くの?」
「次は二日ほどかかる」
「じゃあ、野宿するんでしょ?」
「ああ、そうだ」
初めての野宿だ。気合いを入れなきゃ。
鞄を開けて、クーちゃんを外に出す。
「クーちゃん、窮屈だったでしょ」
「クルル」
クーちゃんは、カタル村にいる間中、言い付けを守って大人しくしていた。
「ほら、飛んでおいで」
クーちゃんを空に放つと、嬉しそうに飛んで行く。
カタル村ではとても気疲れした。
(次の村は、質問好きじゃないといいなぁ)
またあんなふうに質問攻めにされるかもしれないと思うと、村に着くのがちょっと憂鬱になってきた。
旅は、意外なところで大変なんだな、と実感した。
(楽しいことばかりじゃないんだな)
早くも、自分の考えの甘さを感じて反省するのだった。




