トカゲが生まれた。
卵の化石を見つけてから一月が過ぎた頃――
明け方、何か物音がして目が覚めた。
眠い目を擦って音の正体を探す。籠の中からコツコツと音がする。
「何!?」
恐る恐る覗いてみれば、卵が揺れている。
「化石のオバケ!?」
部屋から飛び出して、母の所に行った。
「お母さん!オバケ!!」
「…何寝ぼけてるの」
母はすぐに起きてくれたが本気でとりあってくれない。
「とにかく来てよぅ」
「分かったから、引っ張らないで」
母を連れて部屋に戻ると、パリパリという音が聞こえた。
母と一緒に籠の中を覗きこむと、角の生えたトカゲが割れた卵から顔を出して、卵の殻を食べている。
「お母さん、化石からトカゲが産まれたよ」
「化石じゃなかったみたいねぇ…」
一生懸命、殻を食べている姿を見ていると、ふいにトカゲがこっちを見た。目が合うと、動きを止めて小さく鳴く。
「クルル」
不思議そうに見つめている、円らな瞳が可愛い。
「お母さん、この子飼ってもいいでしょー?」
「…いいけど、世話をちゃんとするのよ」
「うん」
母の許可を貰って、機嫌良くトカゲを見つめる。
(名前、何にしようかなー)
クルルって鳴くからクーちゃん、でいいかな。
「クーちゃん」
呼んで、角をつついてみた。頭が揺れてクゥ、と鳴いた。
「クーちゃん。もう食べないの?」
指で撫でながら言うと、クーちゃんはクル、と鳴いて頭を擦りつけてきた。
「可愛い」
「あらホント。トカゲって結構可愛いのね」
母もクーちゃんが気に入ったようだ。トカゲが嫌いじゃなくて良かった。