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順調だった。
旅は順調に進んだ。
同行しているのは、父の他には護衛のスーシェさんだけだ。
スーシェさんは、父のように商会に雇われていて、父と同じように、決まったルートで仕事をしているそうだ。
商会のあるマゼンタの街に家があって、そこに家族が住んでいるという。
「家族のいるヤツは安全が第一だ」
スーシェさんが言うと、父も、そうだな、とうなずいた。
「冒険するのは若いヤツに任せればいい」
だから私がすかさず言う。
「じゃあ私は若いから、冒険してもいいでしょ?」
「駄目だ!お前は女の子なんだから」
やっぱり反対された。
御者台の父の横で、空を眺める。…いい天気だ。
「クーちゃん、飛ぶ?」
「クルル」
クーちゃんを鞄から出して、空に放つ。
「遠くに行っちゃ駄目だよー」
「クルル」
こう言っておけば見えない所まで行かない。まったく頭のいい子だ。
「羽の生えたトカゲなんて初めて見たなぁ」
スーシェさんが馬の上から言った。
やっぱりクーちゃんは、珍しいトカゲのようだ。さらわれないように気をつけよう。




