28/67
旅に出た。
旅立ちの日。
たくさんの人が見送りに来てくれた。
旅の途中で食べるようにと、色々な物を貰ったり、注意することを嫌になるほど聞かされたりして、なかなか出発できなかった。
「ペンダント、絶対にはずしちゃ駄目よ」
母に念を押された。ペンダントとは、母に貰った結界の魔法具のことだ。
結界は自分で張れるから、と言ったら、寝てる時はどうするの、と怒られた。確かに、私の結界では一晩中は保たない。…やっぱり私の魔法は、魔法具より役に立たないと、少し落ち込んだ。
ラディは、色々な薬を用意してくれた。ラディから貰えるとは思ってなくて、ちょっと驚いた。
「そろそろ出ないと、明るいうちに着かないぞ」
父の言葉で、ようやく出発することになった。
クーちゃんの様子を見ると、鞄の中で大人しくしている。
クーちゃんが迷子にならないように気をつけなくちゃと、飛ばす時は広い所だけにしようと思った。
初めて村の外に出るのは不安だけど、それ以上に旅をするのが楽しみだった。




