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父が帰ってきた。
父が帰ってきた。
「ティニアも、もう16か」
父がしみじみと言った。
「今度の旅は、一緒に連れて行ってくれるんでしょ?」
「約束だからな」
父は気が進まなそうに言う。
「絶対、連れて行ってよ!」
「ああ、分かってるよ」
父がため息を吐きながら言った。
「結界の外は危険だから、気をつけるのよ」
まだ出発するわけじゃないのに、母が心配そうに言う。
父が、成人祝いに、旅用のマントとブーツをくれた。今まで父から貰った物の中で、一番嬉しかった。
母とラディは、お土産の服を貰っていた。二人とも嬉しそうで、父の顔も綻んだ。
母は、旅のルートに危険がないか、しつこいほどに父に確認していた。
それから、旅で注意することをたくさん聞かされた。
久しぶりの四人での夕食は、これからの旅についての話ばかりになった。
部屋に戻り、クーちゃんに話しかける。
「クーちゃん、もうすぐ旅に出られるよ!」
「クルル…」
クーちゃんが眠そうに鳴く。
「おやすみ、クーちゃん」
「クルゥ」
クーちゃんの頭を撫でながら、これからの旅の生活に思いを馳せた。
ワクワクして眠れそうになかった。




