お客さんが来た。
一年が経ち、14歳になってから半年が過ぎた頃。
父たちが、お客さんを連れて来た。若い男の人と男の子だ。
他の村のエルフで、ルーシェンとラシャルという名前の兄弟だという。
「護衛の人じゃないの?」
商会で雇われている護衛は、いつも村長の家に泊まっている。家には、お客さんを泊めるための部屋は無いからだ。
…ちなみに、ラディは兄の部屋を使っている。兄が帰ってくると、二人部屋になってしまうのだが、兄に懐いているので問題ないようだ。
「彼等は、ディルトの護衛をしてくれることになったんだ」
「…ディーを独り立ちさせるの?」
母が心配そうに言った。兄が見習いではなくなるらしい。
「じゃあ、ディーはお父さんとは別の所に行くんでしょ?遠くに行くの?」
私が訊くと、母が言った。
「いきなり遠くには行かないわよね?」
「ああ。まず近場を回ってからだ」
父の言葉に、母は安心したようだ。
「そう。良かったわ」
それから慌ててお客さんを迎え入れた。
二人は夕食を一緒にとった後、村長の家へと向かった。護衛の人と一緒に泊めてもらうそうだ。
ラシャルは16歳だけど、10歳の頃から兄弟で旅をしていたのだと言っていた。
(私も旅に出たいなぁ…)
兄が別の場所に行くのなら、私が父に付いて行っては駄目だろうか。
(お母さんは反対するだろうなぁ)
16歳までは駄目よ、と言う母の声が聞こえるようだ。
(あと一年半の我慢…)
あともう少し、と言い聞かせながら、旅の日々を夢見て眠った。




