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才能がなかった。
部屋に戻って、クーちゃんの様子を見ると、丸くなって寝ていた。
魔法でランプに灯をともす。指先で小さな火を点けただけだ。
他に使える魔法は、自分の周りに結界を張るのと、僅かに風を起すことだけ。魔力が少ないので、小さな魔法しか使えない。
兄は風の魔力しかないけど、結構大きな風を起せるから色々な使い方ができるようだ。実際、旅で役に立っていると言う。
母のようにたくさんの魔法が使えなくてもいいから、せめてこれだけは負けないという力があればよかったのに。
(無いものねだりをしても仕方ないけど)
それでも、旅に役立つものが欲しかった。
(お父さんが、剣を習うのを許してくれればなぁ)
父は、お前が剣を持ったら危ない、と許可してくれなかった。中途半端に使えるのが一番危ないと言う。
弓は習ったけど、才能がないと言われてしまった。僅かな風の力では、矢の軌道を変えることもできなかった。
兄は、火種になるし、小さな力でも役に立つと言っていたけど、魔法具のほうがずっと役に立つと思うと、気分は晴れなかった。




