薬草採りに行った。
「今日はラディを連れて行ってあげて」
母に言われて、ラディと薬草採りに行くことになった。二人だけなのは気まずいけど、色々教えなきゃならないのだから仕方がない。
まず教えるのは、どこまで森に入っていいのかだ。
森には結界が張ってある。その中なら危険なものは入って来ない。
結界の外に出てしまうと危険な動物がいるから、ちゃんと教えておかないと大変なことになる。
「結界のことは聞いた?」
ラディがうなずく。
「じゃあ、この柵の外には絶対に出ないでね」
またうなずいた。
同い年なのに、年下の子を相手にしているような気分だ。
村の中には子供が少なく、年の近い子は他にいない。父は、遊び相手にもちょうどいいと思って連れてきたのかもしれない。
(でもなんだか苦手)
表情もあまり変わらないし、どう思っているのか分からない。
「ほんとに薬師になりたいの?」
コクンとうなずく。
「他になりたいものはなかったの?」
すると今度はうなずかなかった。
「なりたいものがあったの?」
「…わからない」
小さな声で応える。
うつむいてるラディを見ていると、質問ばかりするのは可哀想な気がしてきた。
「…薬草、探そっか」
またコクンとうなずいた。
今度は、薬草のたくさん採れる所に連れて行った。
種類別に探す場所が違うので、少しずつ採って教えながら、あちこち回った。
お腹が空いたら、持ってきたパンと森の木の実で昼食にした。
食べながら、母に任せてきたクーちゃんのことを思った。
(今度からクーちゃんも連れてこようかなあ…)
でも、ラディはクーちゃんのこと嫌いだからなぁと、黙々と食べている横顔を眺めた。
森で採れる薬草や木の実などを教え終わると、もう日が暮れかかっていた。
足早に家に帰ると、母が夕食を作りながら待っていた。慌てて手伝いながら、クーちゃんの様子を訊く。
夕食の後に部屋に戻ると、クーちゃんが嬉しそうにクルルと鳴いて、羽をパタパタさせて出迎えてくれた。
「クーちゃん、ただいま〜」
「クルル」
木の実を上げながら、クーちゃんはホント可愛いなぁと、食べる姿を眺めて思った。