家族が増えた。
クーちゃんが生まれてから三月が過ぎた頃。
眠ってばかりだったクーちゃんの目覚めている時間が、徐々に増え始めた。
「クーちゃん」
「クルル」
呼ぶと、羽をパタパタさせて返事をするようになった。
相変わらず飛ばないし、大きさも変わらない。このまま大きくならずに大人になるのかもと、ちょっと嬉しくなった。
この大きさならどこにでも連れて行ける。動き回るようになったらちゃんと躾をしよう。
父たちが帰ってきた。
小さな男の子を連れている。兄の手を握って、こっちを見ている。
「この子はラディ。薬師見習いにしようと思って連れてきたんだ」
「薬師になりたいの?」
母がラディに話しかけると、コクンとうなずいた。
ラディは、旅の途中の村に住んでいたのだが、父親が死んで身寄りがなくなってしまったそうだ。それで父が、薬師見習いをするなら連れて行ってやる、と誘ったのだという。
「ティニアは大きくなったら旅に出たいと言っていただろう?母さん一人じゃ困ることもあるだろうし、ちょうどいいと思ってな」
父も、母だけ残して行くのは心配だったようだ。
「ティンと同じ10歳だし、仲良くなれるんじゃないか」
兄が、ラディと手をつないだまま言った。
同い年だったのか。8歳くらいだと思った。
こうして、家族が一人増えたのだった。