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父と兄が旅立った。
父と兄が行商の旅に出てしまうと、家の中は急に静かになった。
いつものことだけど、やっぱり寂しい。
クーちゃんが食べているのを見ながら考える。
いつかは村の外に出て、父たちと一緒に旅がしたい。だけど、母を一人置いて行くことになる。
小さな村では皆が家族のようなものだけど、家に一人はやっぱり寂しいだろう。
(まぁ、今悩むことじゃないか)
村を出るとしても、あと五年は先だろう。それまでに考えればいい。
それに、クーちゃんを連れて行けるか分からないし。
五年後には、だいぶ大きくなっているはずだ。置いて行くのなら、母の邪魔にならないようにちゃんと躾けなきゃ。
クーちゃんを撫でると、頭を擦りつけてくる。「クルル」
嬉しそうに鳴くのを撫でながら、どうやって躾けたらいいのか考える。
あんまり厳しくしたら可哀想だし…。
(誰か相談にのってくれないかなぁ)
村長の所のおばあちゃんなら分かるだろうか。でも苦手なんだよなあ…。