1/67
卵を拾った。
薬草採りの帰り、森の中を歩いていたら、目の前に何かが落ちてきた。
「?」
下を見ると卵が一つ。…上を見ても何もない。
親鳥が産み落して行ったのだろうか?しかし、鳥の羽ばたきなど聞こえなかった。
何の卵だろう。鶏の卵よりも二回りほど大きいから、親鳥は結構な大きさではないだろうか。
まあ、何にしても食べられるだろう。そう考えて持って帰ることにした。
「ただいまー。ねえ、卵拾ったよ!」
家に帰って、さっそく母に見せてみる。
「あら、何の卵かしら」
卵を受け取って首を捻っている。母にも親鳥の正体が分からないらしい。
「どこで拾ったの?」
「森の中。空から落ちてきた」
「親が落したのかしら?ずいぶんマヌケねえ」
二人で顔を見合わせて笑う。…卵は今日の夕食に決まった。