第三話 これをやったら友達なくすよ
入学してから一週間ぐらいがたったある日、放課後の廊下で拓也に呼び止められた。
「史登、お前、部活何に入るか決めたか?]
「うんにゃ、まだ決めてないぜ。今考え中」
どうするかな。帰宅部も魅力的だが、さすがに6年間連続で帰宅部はちょっとな……
ここは文化系に入るか?いやいや俺のさわやかな体育会系イメージが崩れてしまう。だからといって運動部に入るのは、汗をかくから嫌なんだよなぁ〜、何に入るか悩みどころだな。
すると、拓也が俺の肩に手を置きながら
「ならば、俺と一緒に陸上部でいい汗をかこうじゃないか」
とっておきのスマイルを俺に向けて、馬鹿げたことを言い放つ拓也。本当に馬鹿なんじゃないのこの子は?よりによって一番汗かくスポーツじゃねえかよ。なので俺の答え既には決まっている。答えは勿論NOだ。
「拒否権を行使します」
「お前に人権があると思うなよ」
「ひ、ひどいやひどいや〜 。拓也の馬鹿〜」
そう言って、『高島流奥義 敵前大逆走』をくりだす俺。ちなみに高島流奥義は、ほとんどが漫画の真似であり、敵前大逆走は、敵の反対側に全力疾走する技である。他に何々流とかは『内田流奥義』『真・高島流奥義』があるが、それの解説はまたの機会に。
まあ、とにかく俺は逃げていく。
「あ!逃げんな、コラ!」
拓也に呼ばれようが俺は死ぬ気で走りだす。本気で逃げていると何故か涙が流れてきた。だって、後ろから拓也が追いかけてくるんだもん。
くそ、やっぱり速いな、拓也は。しかし、こっちだって俺の青春がかかってるんだ
「捕まってたまるかよ」
すると、拓也は不敵に笑って、
「俺の足に勝てると思うなよ」
瞬間的に間合いを詰めてきた。って、きゃああぁぁぁぁ……………………………
ゴフッ
後ろから追いかけてきたのに何故、鳩尾に拳が……
「さあ、約束通り陸上部に入ってもらおうか」
いつ、そんな約束したんだよ!って言いたいのに呼吸ができないから言えねぇ。
だけど、言わずにはいられない。このままじゃ陸上部で部活が決まっちまう。こうなったら、頭をフル回転しろ俺…
……
……
……
そうだ!これで行こう
「拓也よ、一つ提案があるのだが」
「なんだ?聞いてやるから言ってみろ」
俺が考えた作戦はこれだ
「俺はマネージャーとして、陸上部に入ろう。どうだ、悪くないだろう」
「ふむ、それでもいいだろう。お前と同じ部活ならな」
よし、これで汗をかかないですむぜ
「交渉成立だな」
「それと言い忘れていたが恵ちゃんも陸上部だぞ、史登」
「ふざけんなぁぁ、詐欺じゃねえかぁぁ」
拓也は、最高の笑顔を作り、懐から俺の名前が書いてある入部届けを取り出して、見せ付けてきた。ちょっと待て、最初から話し合う気なかったろこいつ。そんな拓也が追い討ちをかけてくる
「言ったよな、入るって」
こいつの笑顔は俺にとって、悪魔の顔でしかない。
そして、俺のスクールライフは始まって、一週間たらずで、真っ黒に染まってしまった。