第二話(母親)・1
第二話(母親)・1
唐突にどこかから電話がかかってきて、恐る恐る出てみたところそれがとても好みの声だったので二度びっくりした。そして聞きなれない声なので三度目のびっくりが私を襲った。
「どなたですか?」尋ねてみる。「私は魔王だ」そういうあだ名の人物なのだろうか。しかし実際の魔王だったら付き合い方を考えなければならない。いや、魔王であるはずがない。魔王というものはファンタジー世界の住民のはずだ。ファンタジー世界の住民が携帯電話なんていう電気機器を持っているはずがない。いや、固定電話かもしれない。
ということは、魔王というのはあだ名だ。そうに決まっている。「お前は、この携帯電話の持ち主とどういった関係だ」おや? やっぱり携帯からかけているらしい。「そんなこと知るはずないでしょう。非通知でかけてくるんだから」そう、どうやって設定するのか私には未だにわからない非通知設定を、この魔王はやってのけたのだ。「ならば、この携帯電話の番号を教えてやろう」それなら最初から非通知でかけてこなきゃいいのに、と思いながら私は11桁の番号を聞いた。そして私は絶句した。この間から行方不明になっている息子の携帯の番号と全く同じだったからだ。