第一話(豚王)・5
第一話(豚王)・5
兵器開発部ではその名のとおり主に兵器を開発するための研究が行われている。兵器開発部なのだから当然、その部屋から出てくるものはほぼ兵器であり、兵器以外のものが完成したことは私の記憶の中では一度もない。この世界に於いて電気というものが発見されて以来、兵器開発部の電灯はつけっぱなしになっていて、その灯が途絶えたことは一度もない、と噂されている。実際どうなのかは、私が二十四時間観察したわけではないのでわからない。しかし当然のことながら、電気発見前よりも新兵器が開発される速度は上がっているのだそうだ。
さて、「ああ、充電器、ありますよ」と言い残して王室から出て行った烏族の大臣は、その兵器開発部で充電器なるものの開発を行っている、という噂を、烏族に姿かたちがに偏っている鳩族の大臣から耳にした。なんでも烏族の優秀な兵器開発者を率いて充電器なるものの開発を開始したらしい、今はどことも戦争が行われていないから良いものの、この行為は大臣としての職権を濫用している、処罰するべきだな、と私は思った。まあ処刑とまでは言わないまでも、それなりの処置は受けてもらうことにしよう。
そして烏族の大臣が兵器開発部に篭ってから三日後、携帯電話の充電器は完成した。どうも豚をかたどったものらしく、桃色をしていて片一方には豚鼻らしき三つの楕円が、そしてもう一方からは尻尾をかたどったのか、短い紐がバネのように巻かれている。まず私は、「なぜ豚をかたどったのか」と尋ねた。