第三話(ヒーロー)・5
第三話・5
どうして戦闘員たちが戦っている最中に怪人が加勢しないのか? これはヒーロー業界では触れてはならない事物、ということになっている。
そもそも悪の組織なんてものを自称するからヒーローに応戦されてしまうわけで、例えば本物の悪党であれば、例えば詐欺師とか政治家とかでもいいけど、そういう本当の悪人は自分たちは悪党でござい、なんて名乗ったりはしない。むしろ正義を自称する。そのほうが悪党側も正義という大義名分の名のもとに動きやすいし、ヒーローだって正義を名乗っている相手を倒したらその人たちに騙されて支持している人たちから抗議の手紙が届けられ、デモ行進なんかされるかもしれない。そんなことになったらヒーローはヒーローとしての支持率を一気に失う。ヒーローが戦う相手は悪党を自称していなければならないのだ。だからヒーローは世界から戦争をなくすことはできない。
僕たちの集団は決して大きなものではないが、それでも時折倒して欲しい悪の組織のリクエストがやってくることがある。その悪の組織とは大抵の場合ブラック企業であり、そういうリクエストを送ってくるのはそこの社員だ。でも僕たちはそういった企業に鉄槌を下すことができない。なぜならブラック企業の偉い人は自分が率いているのが悪の組織であるなんて思っていないからだ。それも本気で。ブラック企業の社長には社員がどのくらい苦労しているか見えていないのだろう、きっと。
怪人が加勢してこない理由について少しも話していない。とにかく悪の組織は本物の悪党と違って自分たちが悪であるという自覚があるから、きっと子供の頃、昭和ライダーとかかな、そういった創作物に影響されているせいで、戦闘員とヒーローが戦っているあいだに割り込んでこないんじゃないかな……というのが僕の予想だ。本当のところはどうなのかわからない。最近のヒーローもののテレビ番組は戦闘員と戦っていても怪人がばんばん加勢してくるし。




