第一話(豚王)・2
第一話(豚王)・2
地下牢はなるべく明るくするように、と私は命じてある。地下牢だからといって暗くしていたのでは私が訪れた際に囚人らの顔を見づらくなるし、暗がりに乗じての脱出もやりやすくなってしまう。それは私の望むところではないので、地下牢はなるべく明るく保つよう部下には伝えてある。
地下牢の監視官は私と同じく豚族であるので信頼はできる。私は地下牢に脚を踏み入れた。するとそこは真夏の森の中のように暑い。地下牢は電化されていないため、明かりは必然的に炎、というか松明、ということになる。それでもってして地下牢を明るく保つように命じてあるため、必然的に松明の明かりは数多くなり、炎の数が増えればもちろん暑くなるのである。
私は携帯電話を接収した人間の囚人が入っている牢の前に立った。囚人は医師の畳に横たわっていた。まるでくつろいでいるかのようである。「おい」と私は囚人に起きるよう促した。「はい?」「この携帯電話とやらの充電方法を教えろ」「教えなかったら?」「貴様は餓死してミイラ化するだろうな」「まあ、教える以外に選択肢はないでしょうね」私が豚だからであろう、この人間は王である私は見下しているような発声をする。「充電器、というものが必要なんですよ。まあ、この世界にあるのかは知りませんが」充電器。それは充電を行うための器具であることを、私は即座に理解した。