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第一話(豚王)・1
第一話(豚王)・1
人間との通話を切った私はそのアドバイスの漠然とした様相にしばし唖然となった。しかし相手が人間であることを鑑みるにそれも仕方がないのではないのか、と思い返した。携帯電話の左上に表示されている充電ゲージとやらの残量も少なくなっている。これではかけ直したところであっという間に内包されている電気が底を尽きてしまうことだろう。
しかし我が城にはこの携帯電話なる物体を充電する手段を知っている者はいない。いや、大臣らがそう言っているだけで実際のところは存在するのかもしれない。こんなにも部下を疑ってばかりで王が務まるのか、という意見も出てくるかもしれないが、頂点に立つ者はその下に立つ者を疑わずにはいられないものなのである。
そこで私は再び地下牢へと向かうことにした。どうせ魔王などという役職には大した公務があるわけではない。実務のほとんどは大臣らがやってくれる。私は最も信頼している鷲族の大臣にこれから地下牢の人間にまた話を聞きに行く旨を伝え、それから地下牢へと向かっていった。